骨の髄までしゃぶる【五条悟】【ヤンデレ】

黒い扉 ページ5

額の上に何か貼り付けられたような違和感を感じ、目が覚める。触れてみると、ザラっと綿の感覚が指先を滑った。
冷えピタシートだ。貼られてから時間が経ったのか、すっかり温(ぬる)くなっている。

眠る前は差し込んでいた陽は落ちてしまっていた。
僅(わず)かに開いたドアの外から、明かりが着いているのが伺える。恐らく彼はまだ起きているのだろう。
慎重に床へ足を着くと、スリッパが用意されてあったので足を通した。
暗くて足元が殆ど見えない。身動きを取るには不便だ。
何か踏まないか、何かぶつけてしまわないか、一歩一歩丁寧に進んだ。

扉を開けると、電気の光が目にしみて重たい瞬きを繰り返しす。まず目に入ったのは向かい側にある別屋の扉。
寝室から顔だけ覗かせて、ゆっくりと見渡した。
ずっと遠くまで続いてるのかと錯覚を起こすほど、広い廊下だ。
…最初は部屋を出て、悟さんを探すことにした。


あの寝室も、今歩いている廊下も、置かれている物一つ一つが高級感漂う物ばかりで、彼の収益の良さを物語っていた。
パソコンや資料が置かれた書斎部屋があったり、人一人住めそうな収納部屋があったり、大勢でパーティーが開けそうなほど広々としたリビングダイニングがあったり。
少しだけ冒険心がくすぐられる。
しかし悟さんの姿は、どこにもなかった。
玄関まで様子を見に行ったが、男性用の大きな黒靴が一足揃えられているだけ。別の靴を履いて外出したのか、と踵を返した。
そして寝室の方へ向かっている途中、ふと廊下の突き当たりに視線を向けた。



一室だけ、見れていない部屋があるのだ。



玄関から離れた、一番奥の部屋。
突き当たりを右へ曲がると、黒い扉がある。
他の扉は白で統一されているのに、その部屋だけは真っ黒で、少しだけ不気味に感じて近付けなかった。
そこだけ廊下の電気は消えていて、突き当たりの手前でついている照明からは丁度影になるため、どんよりと薄暗いのが更に恐怖感を煽るのだ。


不安で重たくなった足を無理に前進させた。
進めば進むほど、影に入って視界が暗くなっていく。


「何これ…」


ドアノブにはキーレスが設置されていた。
カードや指紋をかざすと解除されるものだろう。『PUSH』と記されたボタンを押せば、数字を打ち込むボードが開かれた。
好奇心でドアノブに手をかける。



「何してんの？」



背中から心臓を釘で一突き打たれたような冷たい感覚が走った。

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