口を閉ざす ページ30
神経質に歯を磨いて、手を洗って、消臭スプレーを撒いた。
お陰で口はスッキリしたし、手は石鹸のいい匂いだし、トイレはフローラルな香りがする。
テレビを消した後、先に寝室へ行ってベッドに潜った。
今日眠れなければ、本当に不眠症だったと認めてまた明日から薬を飲めばいい。それでいい。
薬は吐き出さたし、心残りは病院へ連れてってもらうことだけだ。
どうやって約束を取り付けるべきか、と唸らせていると、悟さんが部屋に入ってきたのを背中で感じた。
ギシッとベッドが鳴って、シーツが滑る音と共に私に巻きついてくる腕。背中にあたる体温。頭に降ってきた深い吐息。
振り返ると、目を閉ざした悟さんがいた。
……でも、またパッと覚めてこちらを見ると「起きてたんだ？」と笑う。
「起きてましたよ。足がこんなんだと、不安で眠れたものじゃないです。」
「…そっか。」
「わっ！」
右腿にサラリと人肌を感じて、咄嗟にそれを掴んだ。
「どこ触ってるんですか！」
「いや、感覚あるのかなと思って。」
「大ありですよ、やめてくださいっ」
「じゃあ、キスしてよ。」
「へっ 」
「おやすみのチュー。Aからして。」
一体なぜそっちに発展するのか、理解が追いつかない。
彼の発言はいつだって突飛している。
「Aからしてくれたら、�爐海谿幣絖瓩靴覆い茵�」
「えぇ…」
「えっ何？して欲しいの？」
「失礼します」
「おい。」
よいしょ、と寝返りし、彼に覆いかぶさった。
カーテンの隙間から漏れた月明かりが、青い目をキラキラと輝かせていて、宝石みたいに綺麗で、息を飲む。
「……上乗って」
「えっ、たっ…ただのちゅーですよ、乗りませんよ。」
早く済ませたい一心で顔を近づけた私を避け、悟さんは少しだけ身を起こすと、私の横腹と足に手を回し込んでグイッと引っ張り上げた。
「うわっ！」
必然的に上に乗せられ、顔の距離がグッと縮まる。
「はあ…、いい眺め。」
彼はしみじみと溜息混じりに呟いた。
……早く済ませてしまおう。一瞬で終わらせて「おやすみなさい」と言って横に崩れよう。
大丈夫。口さえ開けなければ、きっと舌は入ってこない。
口をくっつけて、ちゅっと音を立てた。
そして離したが、案の定、予想通り、まんまと、見事に、予感は的中し、後頭部をがっしりと固定されるのだ。
しかし、意地でも口は開けないと決めた。
頑なに口を閉ざせば、悟さんの熱い舌が唇を舐める感覚が這う。手馴れた誘い方だった。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (2023年5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
