甘えたい子 ページ2
伊沢side
A「…」
伊沢「…あの、Aちゃん?どした?」
A「、あ。すみません…!」
これは、どういう状況だろうか。
当事者なのは確かに俺なんだけど、今の状況がいまいちよく理解出来ない。
最近はテレビの仕事が忙しくて、オフィスを2週間ほど留守にしていて。
Aちゃんや乾なんかは新年度に入って授業が始まり勤務時間が変わった影響で、俺がまだ出社できていた頃からなんやかんやで出勤時間が合わなくて、それで…
1ヶ月以上会わず、本当に久しぶりに顔を合わせた今日。
目が合うなりぱたぱたと駆け寄ってきたAちゃんが、おもむろに俺の手を取って自分の頭に載せて、そのままぐりぐりと擦り寄るように頭を動かした。
なんて言えばいいのか…セルフなでなで、ってやつ?
そして、冒頭に戻る。
あまりにも唐突で驚いて名前を呼んだ俺に、はっと我に帰ったように離れようとしたAちゃん。咄嗟にその両肩を優しく掴んで捕まえる。
みるみるうちに顔が赤く染まって、俯いてしまったのを覗き込もうとすると、逃げるようにぷいとそっぽを向いてしまった。
周りにいたメンバーは、複雑だけど興味津々ですという顔でこちらを見ている。
A「…ちがうんです…」
伊沢「ん?」
A「…ちがうんです〜…っ!」
すっかりりんごのようになってしまった顔のまま、ぎゅぅっと目を瞑ってそう零した彼女。
伊沢「なぁに、ゆっくりでいいよ」
怒ってないことを示すためになるべく穏やかで優しい声で続きを促す。
A「…伊沢さん、ずっと会えなかったから…1ヶ月も」
伊沢「うん、そうだね」
A「…だからなんか…ずっと寂しくて」
伊沢「うん、俺もだよ」
A「そしたら今日会えて…今日会えるの知らなかったから…」
伊沢「…なるほど?」
ちら、と福良さんに視線をやるとにこにこと笑っている。なるほどこれはわざと言ってなかった顔だな。
A「伊沢さんだぁ、って思ったら…なんか無意識で…」
伊沢「…ふふ、そっか」
ああ、まずいな。Aちゃんがそっぽ向いててよかった。
多分今俺の顔、めちゃくちゃニヤけてる。
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ふかさ - お姉さまお知らせありがとうございます。更新を待っている内に色々あり全然読めていなかったのですが、このお話(秘蔵っ子ちゃんシリーズ)が大好きで約1年ぶりに読みにきたので今更になってしまいました。ゆきみ。さんの書くお話が大好きです。ご冥福をお祈りします。 (2023年4月12日 23時) (レス) @page13 id: d761253360 (このIDを非表示/違反報告)
猫さくらもち - そんな、、、この物語は私も心を大きく動かされた作品です。精神的にも悲しく、辛い中、お姉さまも伝えてくださりありがとうございます。どうか、ゆきみ。様のご冥福をお祈りします。 (2022年7月23日 8時) (レス) id: f692ce80b7 (このIDを非表示/違反報告)
アリアッテ(プロフ) - 素敵な方だったからこそこんなにも素敵な物語が書けたのだと思います。この作品に出会えて、ゆきみ。さんに出会えて幸せです。お姉様も心を大きく動かすような出来事で心身共にお疲れになっているであろう中、ご報告をありがとうございました。ご冥福をお祈りします。 (2022年7月20日 22時) (レス) @page14 id: 3aa37d57cc (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。と、妹さんにお伝えください。もっと読みたかったなぁ、と思うので過去作品をまた全部読み返そうかと思います。ご冥福をお祈りします。お姉様、無理をなさらず。 (2022年7月11日 6時) (レス) @page14 id: 9d4614c4da (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - とても家族思いで優しい妹さんだったんですね。お姉様からの文章からとても伝わって来ました。ご冥福をお祈りします。長文失礼しました… (2022年7月11日 1時) (レス) @page14 id: 8c9909d177 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきみ。 | 作成日時:2021年8月14日 17時