抱き締めて、一緒に ページ10
"過去さえも抱き締めて"
…ねえ、私はさ、
ちゃんとあなたがあの時あの瞬間、確かにそこで生きていたということ、私に笑いかけてくれていたということ、抱き締めてこられたかな。
きっと、人の過去の話聞いて泣いちゃうくらい優し過ぎるあなたの事だから、
『十分だよ、ありがとう』
って言うんだろうな。
ねえ、今のあなたは何を見てる?何を思ってる?
心の中で、あの日の笑顔に問いかける。
当たり前だけど返事はない。
だけど一瞬、ほんの一瞬だけ。
春の風のように柔らかな、あの愛おしい日々の中、いつだって私のそばに居たあの子の匂いがした気がした。
伊沢「…Aちゃん」
それまでずっと黙っていた伊沢さんが近づいてきて、私と目線を合わせるようにしてしゃがむ。
伊沢「俺らはさ、その子の代わりにはなれないし、そんなことはもちろんAちゃんも望んでないと思ってる」
A「…はい」
伊沢「けど、この先もずっと支えてるし見守ってる。今までAちゃんが1人で頑張ってきた分、これからは俺らも一緒に歩かせてほしい。一緒に歩こう。山も谷も晴れも雨も、今度は一緒に泣いて笑って、そうやってちょっとずつ進んでいこうよ」
いつかと同じ真っ直ぐな瞳で射抜かれて、手が差し出される。
A「…私、多分皆さんが思ってるよりずっとわがままです」
伊沢「うん」
A「本当は頑固だし、泣き虫だし」
伊沢「うん」
A「それでも、いいんですか?」
伊沢「当たり前でしょ。どんなAちゃんもAちゃんだから。他でもないAちゃんだから、俺らは支えたい」
A「…」
自分の手をそこに重ねるのに、どうしてか手が震えていて手こずってしまった。
だけど伊沢さんはそれを優しい目で待ってくれていた。
伊沢さんと握手をするのは、私がここに初めて来た時以来で。
その暖かさはやっぱり、あの子に似ていた。
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イトタク - 初めまして、私は、izwさんとのハッピーエンドがいいです。小説、すごくいいです。更新、楽しみにしています。ゆっくりでいいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: e586254f05 (このIDを非表示/違反報告)
満月(プロフ) - 初めまして!作者様が大変になり、途中で挫折してしまわれるくらいならiniさんで。もし、可能でしたら全員分読めたら…嬉しいです。 (2021年8月13日 21時) (レス) id: 3f82b6a714 (このIDを非表示/違反報告)
kk - 初めまして。この作品本当にキュンキュンしながら読ませていただいてます。私はiniさんエンドが見たいです!更新楽しみにしてます!頑張ってください♪ (2021年8月11日 0時) (レス) id: 9f03f88fd9 (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく拝読しております!!sgiさんエンド希望です!!続きの更新も楽しみにしています! (2021年8月10日 23時) (レス) id: 651585f874 (このIDを非表示/違反報告)
め - sgiさんがいいです! (2021年8月9日 15時) (レス) id: 2dc5815af2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきみ。 | 作成日時:2021年1月9日 18時