腕の中の陽だまり ページ8
乾side
Aちゃんが話した彼女自身の過去は多分、俺を含むその場にいた全員の想像をゆうに越えたものだった。
彼女が話を終えてからしばらくは、誰も言葉を発さなかった。いや、発せなかった。
A｢…さっき、伊沢さんが名前を呼んでくれた時。…あの子に似てたんです｣
Aちゃんの声が震える。
A｢…ああ、あの子も、…っ、なまえ呼ぶとき、いつも、っ、笑ってたなぁ、って…っ｣
堪らなくなった。
喉の奥がきゅぅ、っと痛くなって、自分が泣きそうなことに気がついた。
初対面の時から暖かい子だと思った。
同い年だけどどこか大人びていて、だけど時折子供のように無邪気に笑う。
話すだけで、近くにいるだけで、何となくほっとした。
俺が悩んでる時はすぐに気付いて、だけど無理に聞いてこようとはしなかった。
そういう時はただ、｢乾くん｣ってまろい声で名前を呼んで、寄り添ってくれた。
俺にはちょっとだけわがまま言ってくれるのが嬉しかった。
気が付けば俺はいつだって、Aちゃんに支えられて、元気づけられて、勇気づけられてた。
だけどそんなAちゃんは、壮絶な過去の、その暗くて冷たくて奥深い場所に沈みこんで、ずっと孤独だった。
再び目に涙をいっぱいに溜めた彼女に、その悲しみを慰められる言葉なんて見つけられなかった。
上手く言葉に出来なくて、けどこの気持ちをどうにかして伝えたくて。
隣で震える華奢な肩を、思わず抱き締めた。
優しく包み込むように、なんて出来なかった。ただ子供みたいに、腕の中に閉じ込めるように、際限なく。
さっき抱き上げた時にも感じたけど彼女は間違いなく痩せていて、細くて軽くて、壊れてしまいそうだった。
ついにぽとり、と涙が溢れて、喉から引き攣ったような声が漏れた。
A｢いぬいく、？｣
乾｢ごめ、っ…俺が泣いていい立場じゃないのに、…っ｣
きゅ、っと脇腹の辺りの服が掴まれる感覚がした。俺よりひとまわり小さな手が、控えめに俺のパーカーを掴んでいた。
A｢…いぬいくんは、やっぱり優しいね、｣
ぐす、と鼻を鳴らす彼女の声は、こんな時でもやっぱり包み込むように優しかった。
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イトタク - 初めまして、私は、izwさんとのハッピーエンドがいいです。小説、すごくいいです。更新、楽しみにしています。ゆっくりでいいです。 (2021年8月15日 22時) (
レス) id: e586254f05 (このIDを非表示/違反報告)
満月(プロフ) - 初めまして！作者様が大変になり、途中で挫折してしまわれるくらいならiniさんで。もし、可能でしたら全員分読めたら…嬉しいです。 (2021年8月13日 21時) (レス) id: 3f82b6a714 (このIDを非表示/違反報告)
kk - 初めまして。この作品本当にキュンキュンしながら読ませていただいてます。私はiniさんエンドが見たいです！更新楽しみにしてます！頑張ってください♪ (2021年8月11日 0時) (レス) id: 9f03f88fd9 (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - はじめまして！いつも楽しく拝読しております！！sgiさんエンド希望です！！続きの更新も楽しみにしています！ (2021年8月10日 23時) (レス) id: 651585f874 (このIDを非表示/違反報告)
め - sgiさんがいいです！ (2021年8月9日 15時) (レス) id: 2dc5815af2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆきみ。 | 作成日時：2021年1月9日 18時
