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高速道路に入り、ものすごいスピードで後ろへ流れていく景色を見ながら、なかなか高専に到着しないことに気持ちが急いた。それでも、このまま永遠に高専に着かなければいいとも思っていた。

何かが現実として目の前に突きつけられるのがこわかったのだ。

結局、私と日下部さんが高専に到着した頃には、すべてが終わっていて、高専関係者は皆、事後処理と今後の対策に追われていた。

朝から高専で仕事をしていた補助監督さんの証言によると、15時頃、未登録の呪力の感知を知らせるアラートが校舎に鳴り響き、補助監督さんや教師陣が蠅頭(ようとう)の対処と事実確認に追われている中、突如、重傷を負った夏油君が現れて、任務失敗の経緯と事態の深刻さが明らかになったのだという。

「硝子ちゃん」

非常口の緑の明かりに照らされた薄暗い廊下のベンチで、ひとり腰かける硝子ちゃんを見つけて声をかけると、彼女は唐突に仕事の話を始めた。

「こんな仕事してるとさ、やっぱりみんな死んでいくんだよね。つらくはないよ、仕事だから。もっと技術を磨かなきゃな、とか、もっとこうすればよかったかな、とか反省する日はあるけど、だからってこの仕事を辞めたいとは思わない。そもそも医者が天職だなんて思い込んでる人間は、医者に向いてないと思わない?」

からりと笑って語る硝子ちゃんの(くう)を見つめる瞳が、どこか呆然としていたので、私は特に自分の意見を言わず、黙ったまま隣に座って彼女の話に耳を傾けた。

「黒井って女の人が医務室に運ばれてきたとき、助からないってわかった。刀傷が内臓を深く傷付けてたし、蹴られた衝撃で後頭部が砕けてたんだ。彼女が亡くなったあと、重症の夏油のところに駆けつけたら、あいつ、悟はどこにいるんだ、とか、黒井さんは無事か、とか死にかけの身体で聞いてきてさ。黙ってろって怒鳴ったら、やっぱり二人とも死んだのか、なんて言うんだ。やっぱりって何だよって思ったけど、そう言った夏油が本当に死にそうな顔をするから、私が全員治してやるから安心しろって言ってやるしかなかったよね。我ながら男前で泣けてくるよ。今度、五条と夏油には何か奢らせないとな」

やがて、硝子ちゃんの身体が弛緩して私にもたれかかってきたのに気付いて、顔を覗きこむと、彼女は座ったまま眠っていた。

これまで硝子ちゃんは、正視に耐えない大怪我を負った術師が運ばれてきても、決して動揺するそぶりを見せなかった。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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