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6-2 ページ31

深夜、地鳴りのような雨音で目を覚ました。雷鳴が轟く、信じられないほど近くで。まるで世紀末だ。私は目を閉じてじっとしていたが、ついに耐えきれなくなり、ベッドから降りて部屋を出た。身の危険を感じるほどの雨音は、不安定な心をむやみに刺激して(わずら)わしかった。

学生寮の薄暗い廊下をあてもなく歩いていると、うすく開いた談話室のドアから漏れる一筋の光に気づいた。そっとドアを開ければ、夏油君が、L字型のソファの端にぼんやりと腰かけている。

「夏油君」

彼は視線だけを動かして私を見ると「あぁ」とうすく頬を痙攣(けいれん)させた。笑ったつもりだったのだろうが、口の端が全く持ち上がっていなかった。

「すごい雨だな」
「うん」

少しスペースを空けて隣に座った。夏油君は以前より明らかに痩せて覇気がなく、無造作におろした髪と土色の肌は落武者を思い起こさせた。

でも、私も同じようなものなのだろうな。

私は、先生や硝子ちゃんや七海君や灰原君の、何か言いたげな視線をぼんやりと思い出した。

「最近、どうだ?」

ふいに夏油君が問うた。

「どうって?」
「忙しいだろう」
「あぁ、うん」

沈黙が落ちる。夏油君は私の言葉を待っていた。

窓を殴りつける雨が、静かな部屋に凄まじい音を立てている。

「ちょっとしんどいかなぁ」

私の声は自分でも意外なほど軽かったけれど、それが逆に、どこか滑稽で哀しい響きを持たせてしまった。夏油君は少しうなずいた。

「そうか」
「うん」
「何かあったのか」
「うーん」

私は、ちょっと笑った。

「なんだろうね」
「うん」
「なんていうか……、」
「うん」
「このままじゃ自分が駄目になるってわかってるの」
「あぁ」
「何とかしなきゃって、色々なことを考えた。でも……」
「……でも?」
「でも……、どうすればいいのか」
「そうか。それは……つらいよな」
「夏油君はどうなの?」
「私?」
「しんどいでしょう」

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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