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後日、発送した荷物が届いたと聞いて事務室へ向かうと、灰原君が大きなダンボールを受け取っているところだった。

「竹之内さん! お疲れさまです!」
「お疲れさま。大荷物だね」
「はい、実家から届いたんです」

ダンボールを抱え直した灰原君は、困ったように笑う。

「年末年始、任務で実家に帰れないって電話したら、心配させちゃったみたいで。ちゃんと寝てるし食べてるよって言ったんですけど、食材をたくさん送ってくれたんです」
「優しいご家族なんだね」
「そうかもしれませんが……、みかん100個とか白菜10本とか、正直食べきれないというか。良かったら、後でいくつかもらって下さい」
「いいの? じゃあ、少しだけ」

窓口で私宛てのダンボールを受け取りながらこたえると、「竹之内さんも、実家からの仕送りですか?」と灰原君が問う。なんと答えればいいのかわからず、あいまいに微笑むと、肯定と解釈したのか、「お互いに大変ですね」と他意のない苦笑を向けられた。

「もし食材の消費にお困りなら、いつでも声をかけて下さいね。 お裾分(すそわ)け、大歓迎です!」
「うん。ありがとう」

灰原君はすごく(さわ)やかに笑うと、任務まで時間がないので失礼します! と元気よく走り去っていった。

その後ろ姿を見送りながら、私は、彼の愛嬌や清々(すがすが)しさに、別世界の輝きを感じた。

ーーもしかして、私みたいなのが娘だったから、母は幸せになれなかったのかもしれない。

ふと、そんな考えが脳裏をよぎった。

ばかばかしい。さすがに自責がすぎる。

頭ではそう一蹴しつつも、心の花瓶には、深い亀裂が入る音が聞こえた。


***


徐々にしかし急激に、日々の任務と鍛錬によって実力をつけていった五条君は、人間離れした緻密な呪力操作を身につけようとしていた。

「高度統制の消費効率の悪さを、常に脳に反転術式を施すことで可能にするのだ」と常識ではあり得ない目標を立てて意気込む彼は、ひとたび全能感に包まれると、任務に鍛錬にと少ない休憩時間で精力的に動き続け、あまりの呪術へののめり込みように、傍らで見ている者が怖くなるほどだった。

五条君は天才だった。しかしそれ以上に、努力していた。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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