5-9 ページ22
「何もなければ娘に電話をかけてはいけないの? どうしてるかと思ったのよ」
あころころと笑う母の声を聞きながら、私は、男の人とうまくいっているんだな、と思った。
あ男がいないと眠れない女というのは確かに存在して、母もそのタイプだった。母は恋が終わるたびにこの世の終わりみたいに泣き、情緒不安定になり、お酒を飲んで部屋を荒らすことさえあった。幸い、とても美しい人だったから、母と付き合いたがる男は引きも切らず現れて、すぐにまた、上機嫌で新しい男の腕に自分の腕をからめていたけれど。
「そうじゃないけど。ただ、いつもは私が電話しても、折り返しすらくれないじゃない?」
「あら、拗ねてるの? 仕方ないじゃない。瀬奈は学生で暇かもしれないけど、私は忙しいのよ。どうせ大した用じゃないんでしょう?」
「……うまくいってるの? 今の人とは」
「えぇ、籍を入れたわ」
あ籍を入れた?
あ私は絶句し、母の言葉を脳内で
あそれがまさか、何の相談もなく結婚だなんて。
あいったい、どの男だろうか? 混乱する頭で必死に記憶を辿ったが、手がかりになりそうなことは、なにも思い出せなかった。
「瀬奈? どうかした」
「どうかしたって……、急に言われても困るよ。どんな人なの?」
あ電話口で、母が鼻白らむ気配がした。
「心配しなくても、あなたに迷惑はかけないわ」
「そういうことじゃなくて……。なら相手の方の都合のいい日を教えて。なんとか休みを取って挨拶に行くから」
「いらないわ、挨拶なんて。そういう堅苦しいのは好きじゃない人なの」
「……お母さん、私は結婚に反対してるわけじゃないの。お母さんは美人だし、まだ若いし、新しく人生を一緒に歩める相手ができたっていうのは、本当に良かったと思ってる。でも、家族になるんだもの。私に一言、知らせてくれてもよかったでしょう?」
「私の人生を私がどう生きたって、私の自由でしょ」
225人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時