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「夜蛾先生。お疲れさまです」
「お疲れ。そういえば今日は、新宿で任務だったな」
「はい」
あひっきりなしに電車が往来するホームで、その騒音に負けまいと、やや声を張りながら近寄った。先生は、きちんとした黒いスーツを身に纏っている。
「先生は、会議か何かの帰りですか?」
「いや、そうじゃない」
あ私は、そうですか、と引き取ろうとしたが、それよりも一拍早く、夜蛾先生が言葉を続けた。
「黒井美里さんのご自宅へ
あ黒井美里、という名前を聞いて、最初は誰のことかわからなかった。しかし「天内理子さんの火葬は高専主導で行ったから同行できたんだが、黒井美里さんの葬儀にはどうしても参列できなかったからな」と告げられて、あの晩の理子ちゃんの話の中で、何度も登場した女性の名前だと思い出す。
「……そうでしたか」
「あぁ」
「理子ちゃんと黒井さんは、今、どちらにいるんですか?」
あ怪訝な顔をした夜蛾先生に、「とても仲がよかったみたいだったから、ふたりが近くで眠れているのか気になって」と付け加える。夜蛾先生が、サングラス越しに目を伏せたのがわかった。
「詳しい場所は告げられない。が、天内理子さんは高専の管理下の墓に、黒井美里さんは黒井家の方々が管理する墓に
「そうなんですね」
あ黒井は口うるさいところがあるのじゃ、と親しみを込めた愚痴をこぼしていた理子ちゃんの声を思い出す。若いのに母親みたいじゃろ、といたずらっぽく付け加えた忍び笑いも。理子ちゃんは黒井さんのことを世話役だと言ったが、ふたりの間には、長い年月の積み重ねが築いた絆が確かにあった。それでも、ふたりは共に眠ることさえ許されなかった。単なる世話役と主人だから。あんなに心が深く繋がっていたにも関わらず。
「今日ここで私と会ったことは、悟と傑には言わないでくれないか」
あ夜蛾先生は言いつつサングラスのブリッジをくいと持ち上げた。その手首が随分と細くなっていることを私は見つけた。
「あのふたりは強い。だがこれは、大人が引き受けるべき責任だからな」
あ夜蛾先生は唇の端を持ち上げるように笑った。隠しきれない疲れの
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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時