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「瀬奈さんの学年で、女子で、呪術師志望の方ってどれくらいいらっしゃいますか?」
「ふたりだけ。そもそも補助監督志望の同級生がいないから、私たちの学年は呪術師しかいないんだけどね」
「そうなんですね! 母が女の子はふつう補助監督になるものだっていうから、ちょっと気になって。でも、そっかぁ。やっぱりとりあえずは呪術師を目指しますよね」

私は庵ちゃんの、呪術師に対する認識の甘さに、胸のざわつきを覚えた。しかし自分はなぜ呪術師になったのだったかと記憶を辿(たど)ると、その理由は、任務ばかりの日々に(まぎ)れて雲をつかむように曖昧(あいまい)だ。きっと、かつての自分も庵ちゃんのような目をしていたのだろう。それを思うと、何かを説いたり(いさ)めたりする気には、到底なれなかった。



***


後日、連絡先を交換した庵ちゃんから「喜んでもらえました!」と、可愛い絵文字をふんだんに使った感謝のメールが届いた。

プレゼントを渡す際に梅田での出来事を話したのか、歌姫先輩からも、御礼をかねたご飯の誘いがあったが、私はそれを丁寧に断った。

遠慮したのではなく、単純に、忙しかったのである。

秋をすぎた頃から、準一級術師として早朝から仕事に駆り出され、寮に帰ってきてもただ疲れ果てて眠るだけの日々が続いた。この時期は閑散期のはずなのに、と、姉妹校交流戦に参加した去年を思い出して、私はため息をついた。

だけど、一級術師である五条君と夏油君は、私の比にならないくらい、文字通り息もつけないほど忙しい毎日を送っていた。彼らは朝早く出掛けては深夜に帰ってきて、その間に何本も任務をこなしていた。彼らが、どんどん実力をつけて、正真正銘の強者のさらに向こう側、現代で2人目となる特級術師への昇級へも秒読みだろうと噂される中、必然的に、同級生4人で過ごすことは少なくなっていった。


***


しとしと。秋の雨のけだるさが、校舎に忍びこんでいるかのように空気の流れない夕方、私は廊下を歩いていた。

自動販売機が2台立ち並んでいるだけの薄暗い廊下のベンチに、夏油君がいる。肌寒くなりはじめた季節に相応しくない薄着で、うつむいて腰かけていた。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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