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「とにかく、なんとかして、歌姫ちゃんが喜ぶプレゼントを買いたいんです。何か良いアイデアないですか?」

歌姫先輩は、ハイブランドや高級品でなくたって、庵ちゃんが一生懸命考えて選んだプレゼントなら、何でも嬉しいだろう。

だけど、歌姫先輩を喜ばせたい一心で、精一杯背伸びをして、わざわざ京都から大阪の百貨店に出向いてきた庵ちゃんに、そんな月並みなアドバイスは響かないであろうことも想像できた。

「予算はどのくらいなの?」
「五千円くらいで考えてます。少なすぎるようなら、一万円なら何とか」
「そんなことないよ。五千円もあるなら、リップはどう?」
「リップですか?」
「うん。何本持ってても楽しんでもらえるし、もし色選びに迷うようなら、リップケアに特化したものを買えば良いし」

私はコーヒーカップを口元へ運びながら、さりげなく腕時計に目をやった。新幹線の発車時刻まで、まだ余裕がある。

「そっか。そうですね。それなら、確実に喜んでもらえるかもしれないですね」

庵ちゃんは何度も頷きつつ言ったが、まだ不安の残る顔つきをしている。私は伝票に手をのばしてにっこりした。

「良かったら、一緒に行ってみない?」

百貨店一階の化粧品売り場へ続く自動ドアをくぐると、甘く華やかなローズ調の香りが、私たちの全身をふわりと撫ぜた。

照れていたのか、最初は各店舗のコスメカウンターに並ぶリップをおそるおそる眺めていた庵ちゃんだったが、声をかけてきた若い美容部員の如才ない接客に、だんだん楽しくなってきたらしい。

「こちらはいかがですか? 今期一番人気のお色で、保湿効果もあるので、ぷるんとした唇になってお勧めでございます」
「わぁ、ほんと、可愛いですね。でも、ちょっと色が明るすぎるかな……。あまり派手なお化粧を好まない人なんです」
「そうなんですね。でしたら、こちらやこちらはいかがでしょう? ヌーディな色合いで、お肌にうまく馴染みますよ」

言いつつ美容部員が、自らの手の甲に2色のテスターを引いて見せる。「ほらね、どちらのお色も肌色に近いですが、赤みがございますので、血色が悪く見えることもありません」

庵ちゃんが困ったように私を(うかが)った。こういう買い物に慣れていないせいか、どうしたら良いかわからないらしい。

「庵ちゃんはどっちが好き?」
「私は……、こっちが好きです。すみません、これ、プレゼント用に包んでもらえますか?」

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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