03.どうか私のちっぽけな願いが ページ4
憂鬱だ。
すでに敷かれた陣を前にして、だんだん生命力が薄れている気がする。
そんなものは錯覚だが、それでもこんな風に現実逃避をしてしまうくらい、現状は冷たく非情だった。
雇い主の、「早くしろ」と言わんばかりの視線が痛い。けれど、私は一般人なんだ。たしかサーヴァント、だったか? そんなものを召喚する時にマトモな精神を保てとか、鬼かあなたは。
「ねぇ、コモリさん。あなたの気持ちは分かるのだけれど、そろそろ召還を済ませてくれない? あなたが固まってしまってから、既に1時間は過ぎたわ」
「あと10分待っていただければ、気持ちが落ち着くと思います」
「それは先程も聞いたのだけど。聖杯戦争に参加することが契約の大前提でしょう、ここで詰まっていては、先が思いやられるわ」
「契約? 脅迫の間違いでは」
……やめてくれ、そんな申し訳なさそうな顔をされると、ほんの少しの良心が痛む。
「……分かりましたよ。今、召還しますから」
深呼吸をして、魔方陣に向き直る。緊張だけでも死んでしまいそう、だけど――
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
やらなければ死ぬ。死ぬのは、嫌だ。
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
あの、故郷での恐ろしい火災を思い出す。あの火災で誰もが死んだ。生き残りなんてほとんどいなかった。
「―――――
思い出す。
「――――――告げる」
故郷の、冬木の聖杯戦争で起きたあの数々の事件が、繰り返されるかもしれない。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
死を回避するために死に挑むなんてついてない。思わず乾いた笑みが出た。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者」
きっと私は死ぬだろう。無様に地面に這いつくばるだろう。
これが【死にたくない死にたがり】に相応しい最後なのかもしれない。
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
ただ、願わくば。
楽に死ねるような、優しい人が来てくれますように、なんて。
04.反逆王、満を持して降臨す→←02.召喚されし、哀惜のハサン
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娜藍(プロフ) - 終わりました (2017年10月1日 3時) (レス) id: ca78637e54 (このIDを非表示/違反報告)
娜藍(プロフ) - 更新が被ったらしいので、また更新しますね。 (2017年10月1日 3時) (レス) id: ca78637e54 (このIDを非表示/違反報告)
虎トラ(プロフ) - 編集終わりました (2017年9月30日 23時) (レス) id: da57c3114b (このIDを非表示/違反報告)
娜藍(プロフ) - 更新終わりました (2017年9月30日 22時) (レス) id: ca78637e54 (このIDを非表示/違反報告)
虎トラ(プロフ) - 編集します (2017年9月30日 22時) (レス) id: da57c3114b (このIDを非表示/違反報告)
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