夜久衛輔とシちゃったら

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「あっ、Aさんだ！！ Aさーん！」



『あはは。やっほー』





体育館に入るなり、

リエーフが突然大声をあげて


二階に向かって手を振りだした。




それにつられて二階を見ると、


Aが手を振って俺達を見ていた。



周りの部員たちがざわめく。





「え、あんな綺麗な人うちの学校にいたっけ？」


「リエーフ知り合いとか流石だな」


「それな。やっぱりイケメンは美女と出会う機会多いんだ」



「なあ、ちょう可愛くね？」


「それ！ 顔ちっちぇ」


「腰も細いしな！」


「いーなー。俺、あんな彼女ほしいわ」









聞こえてくるそれは、

どれもAを褒めるものばかり。



しまいには、


リエーフとお似合いだと言う声まで俺の耳に届く。







…もや、もや。






まただ。


またよく分からない感情が俺を包む。



Aを誰にも見せたくない。


眩しい笑顔を向けるのは、俺だけにして欲しい。




そんな事を思ってしまう。何なんだこれは。





負の感情が俺の中を支配していく。



たまらなくなった俺は、


呑気に手を振るAの名前を呼んだ。






「A！ ちょっとこっち来い！」



『んん！？ 分かった』




一瞬、首を傾げたが素直に俺の言葉に応じて


階段へと駆けたAの姿を確認すると、



俺も階段下へ向かうべく足を運ぶ。






タッタッタッと軽やかに階段を下ってきた


Aの姿すら、愛しく感じる。




さらさらの髪の毛を耳にかけて


Aの目は俺を捉えた。






『やっくん！』



「どうしたんだよ、こんなところに。なんかあった？」



『んーん、見に来ちゃった』



「なんだよ、それ」





照れくさそうに笑う、呑気なA。




隙なんか見せんなよ。



お前のこと可愛いって言ってる男が沢山いるんだ。



もっと危機感持てよ。




という思いから口に出てしまった言葉。





しまった。




言葉が強くなりすぎた。




そう思ってAの顔を見たが、



弁解しようにももう遅い。




俺の最愛の人は酷く苦しそうな顔なのに、



取り繕ったような


下手くそな笑みを浮かべていた。





「っごめ」



『あー…、ごめんね。バレーしてるやっくん、気になって見に来ちゃったんだ。迷惑だって考えてなかった。……帰るね』




「っおい！」






咄嗟だった。





小さな体が、俺の腕の中に収まる。



それが逃げないよう


強く、強く抱きしめた。





「……行くなよ…っ」

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