夜久衛輔とシちゃったら

04*(貴女side) ページ5

「あっ、Aさーん！」





移動教室から戻ってきて教科書を片し、


次の授業の準備をしていると



教室の外から大きな声で名前を呼ばれた。




何事かと声がした方に顔を向ければ、


委員会で仲良くなったリエーフくんの姿があった。





うん、呼んでくれるのはいいけど、


周りから視線が集まって恥ずかしいかもなあ。





リエーフくんは、


私がそう思っていることなど知るはずもないので


どうしたのとそばに駆け寄れば



無邪気な可愛い笑みを浮かべた。






『リエーフくんじゃん！ こんなとこまでどしたの。なんかあった？』



「Aさんいるかなーって！ 来ちゃった」


彼の姿は、


家で飼っている犬に似ている気がしてならない。





大きな耳と、フサフサのしっぽが


左右に大きく振られているのが見える。気がする。




うちの犬もこんな喜び方するわ



なんて思いながら大きな犬(リエーフくん)に構う。





『暇か！』


「違いますよ！ 時間作ってきたんですって！」

『休み時間あと5分だけどね』



「5分でもいいから会いたくて」



『可愛いなぁ、このおっきいワンコめ！』



「ははっ！ あざっす！」






背を屈むよう促して、


わしゃわしゃ豪快に頭を撫でてやると



リエーフくんは気持ちよさそうに笑った。







「時間を作った」



「会いたくて」






この言葉に、胸は大きく音を立てた。




こんな言葉は、


恋愛的に好きな人以外には使わない言葉だろう。





……直球すぎる。




若さ故なのか、リエーフくんの本質なのか。





年下の男の子は可愛いとは思うけれど



恋愛対象としてでは無く、愛玩の類だ。







…私以外の女子にこうしたら、



きっとリエーフくんは幸せになれただろうに。






ごめんね。と意味も込めて頭を撫でる。







わたしは、


リエーフくんの好意に付かないほど鈍感ではない。






片想いをしていると


好きな事を相手に気付いて貰えなくて辛いというが、




好意に気付く方も大概だ。




正直こっちの方がかなり辛い。




自分への好意に気付いていても、


それに応えられないのだから。








さて、この大型犬をどうしたものかと


扱いを決めかねていると、



聞き馴染みのある声がわたしの耳に届いた。








「あれあれ？ リエーフくんじゃないの」

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