第16話 ページ18
寒い。
しかも狭い。
まるで雪に埋もれたかのような感覚。
てか雪だ、これ。
(どこか…中から開けられないか…！)
私は暗い視界の中、片腕を細く伸ばす。
雪をかきわけ、進めていくと
ーピトッ
腕の先に何かが当たった。
布のような感覚、しかも温度も感じられた。
そして“それ”が動くと、何かに握られた。手だろうか。
(誰かいる…？)
ーギュッ
そして腕は強く握られ、引っ張っている。
しかし力は弱い。
(手があるなら…こっちが引っ張るのみ！)
私は残っている片腕を細く網目に伸ばし、大人1人入るくらいの広さに広げ、スペースを確保する。伸ばしている方の腕を此方側に力いっぱい引っ張る。
ーズルっ
出てきたのは白い髪に白と金、紅の色が特徴的な服。
ソーン=ユーリエフであった。
しかし、彼の兄と同じ金色の目は固く閉ざされていた。
『息はしている…鼓動も通常の速さ。汗や顔色の変化なし。少し体温は低い…かな？あ、小さな羽が生えてる』
彼の背中には氷の蝶の羽が生えていた。
しかしHSのよりかは小さい。本当に両手のひらくらいの大きさのがちょこんとそこにあった。
「…兄様」
ー寒い
ー怖い
ー苦しい
ー寂しい
ー1人にしないで
ソーンはか細い声で呟き、私の腕を掴む。
彼の目から氷の涙が落ちていた。
『ソーン、あんたの兄様はここに来てるよ。
まあ、ちょっと性格が“元”よりおかしいとは思うけど、優しくて強くて…カッコいい兄様が待ってるぞ。早くここから出よう』
彼の表情が少しだけ和らいだ気がした。
私は腕を最大限に伸ばし、広げていく。
すると、ピシッと何かがヒビを入れる音が聞こえてくる。
その音は段々と広がり、この狭い雪の中から光が漏れ出していき、そして
ーバリンッ！
私達は外に出た。
苦しいところから急に肺から酸素が入り、私は少し咳き込んだ。
「A！心配かけんじゃねえよ！」
13は私の頭を叩く。
彼の方を向くと、愛用している大鎌の刃は既にボロボロになっていた。
『ごめんごめん、それとソーンを頼みたいんだけど…』
「私が運ぶ。13はAを頼んだ」
ルチアーノはソーンを横に抱き、屋敷の方へ向かった。
13は私の肩を掴むと、目を見開いていた。
「…おい、お前…眼…どうした？」
『え？』
私は側に雪解け水でできた水たまりを覗くと、私の目の黒目が血のように赤く染まっていたのだ。
『感染…いや…進化？』
「…みたいだな」
私はまた“バグ”が増えてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
から傘(プロフ) - この作品すごく好みでした、次の話も期待しています!! (2020年3月14日 4時) (
レス) id: 3a0b2e4785 (このIDを非表示/違反報告)
青蛇(プロフ) - 旅人さん» ありがとうございます。自分的にも気に入っている世界観なのでコレからもお楽しみくださいませ (2019年2月6日 20時) (レス) id: c680f9d767 (このIDを非表示/違反報告)
青蛇(プロフ) - ペンギン太郎さん» ありがとうございます。唯一バグが無いキャラなので性格を少し濃いめ？にしました。アダムも出てくる予定はあるのでお楽しみ下さいませ (2019年2月6日 20時) (レス) id: c680f9d767 (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - とても楽しく拝見させていただいてます！あまり見ないストーリーと(元からではありますが)個性豊かで魅力的なキャラ達に心奪われました… 尊すぎる 無理のないよう、更新頑張ってください！ (2019年2月6日 20時) (レス) id: 42db0291b9 (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン太郎(プロフ) - ここのアダムが変態っぽくてすごく好き…応援してます！無理しない程度に頑張ってください！ (2019年2月6日 7時) (レス) id: a451b06430 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：青蛇 | 作成日時：2018年11月8日 21時
