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「Aさんはなんでツアーに来たの？
旦那さんは？」
「本当は二人で来るはずだったんだけどさ…
置いてかれたの！」
「え、何それ。」
予想していなかった答えに戸惑っていると
Aさんはノンアルコールのビールを飲み干して
両手で頬杖を付き、月を見つめた。
「旦那、辰哉っていうんだけど
喧嘩するとすぐ拗ねてどっか行くの。」
「子供みたい。」
「でしょ？
旅行好きなんだけど、前日とかに喧嘩すると
寝てる間に1人で旅行先まで行っちゃうの。」
よくそれを笑顔で話すことができるなと思うけど
こんな性格だからその旦那さんと気が合うのだろうと
自分の中で勝手に納得した。
「だから、今回も探してるんだよね〜。
このツアーいろんな所回るから全然見つからない！
なんかむかつくから、せっかくなら観光楽しもうって。」
「Aさんも人の事言えないぐらいポジティブだね。」
俺にはAさんの器の広さが理解できなかった。
そんなことされたらすぐにでも別れるのに
目の前でこんなにヘラヘラしながら
二本目の缶を開けようとしている彼女が宇宙人に見える。
「今あり得ないって思ったでしょ。
惚れた弱みってそんなもん、浮気されるよりまし。」
「惚れた弱み…か。」
交際経験は10人ほど。
多いと思われるかもしれないけど、遊んではいない。
来るもの拒まず去るもの追わずで
本当に好きなの？なんてドラマのセリフみたいな言葉で振られる。
今まで半年続けばいい方だった。
「俺、長続きしないんですよね。
なんか面倒くさくなって放置しちゃうんです。」
「罪な男ってやつだね。」
恋愛だけじゃない、何も長続きしなくて
バイトや趣味、勉強だって途中で投げ出してしまう。
「旦那さんとは長いんですか？」
「辰哉とは23で付き合って、25で結婚したから
交際期間いれたら今年で5年目とかかな。」
6年なんて俺にはもう何十年にも感じる。
何度も言うが本当に28歳なのか、
どうやったらその若さをキープできるのかと横目に見ると
綺麗に伸ばされた長い黒髪を耳に掛けるAさんは
幻想的で息をのむほどの美しさで、年相応に見えた。
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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (
レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました！そう言っていただけてすごく嬉しいです！ (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
未(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました（ ; ; ）生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした！これからも愛読させていただきます！ (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年1月27日 20時
