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＿Meguro side＿
「じゃあ、旦那さんって…。」
「ごめん、騙すつもりはなかったの。」
今思えば気づく点はいくつもあった。
俺に見せる写真を見つけるときかなり前まで遡っていたことや
本当に探しているのかと思うような動作
旦那さんとの思い出を話すときの
今にも消えてしまいそうな儚さをまとった表情。
「プレゼントにはね、マフラーと
最終日が結婚記念日の
この寝台列車ツアーのチケットが入ってた。」
ようやく呼吸が落ち着いてきたのか
ベッドから起き上がって夜空を見渡す。
月明かりが照らすその儚く美しい表情は
そんな辛く苦しい過去からできていたんだと思うと
自分の事じゃないのに、涙が出そうになった。
「その時は自暴自棄で行くことができなかった、
手紙も見ることができなくて。」
「じゃあ、どうしてこのツアーに…。」
「余命になっても、私のおんぼろな体は
終わりが来ることなく今日まで生きてきた。
もしかしたら、辰哉が手紙を読まない私に
拗ねてこっちに来るなって言ってるのかもしれないって。」
窓から人差し指で月の形をなぞるように触れる。
Aさんは頭もとに置いてあったリュックから
一枚の手紙を取り出した。
「ここにね、ほら。」
「もし喧嘩しても…、」
[もし喧嘩しても、いつもみたいに
缶ビールを持って来てほしい。
そしたら俺は、源氏巻きでも買って待ってるから！]
「全然反省してないんだから…。」
涙を流しながら笑みをこぼすAさん。
きっとこの手紙を読んで何度も涙を流したんだろう、
所々の文字がにじんでいることに気が付いた。
「その手紙見て思ったの、あの喧嘩をした後
そういえばまだ仲直りしてなかったって。」
「Aさん…。」
「だからもしかしたら
まだ拗ねてて、先に旅行に出ちゃったのかなって。
だから去年行けなかったこのツアーに参加したの。」
Aさんは本当に旦那さんを探しているんだ。
仲直りできないまま、最後に話すこともできないまま
この世を去ってしまった彼を。
「いないってわかってる。
でも、やっぱりどこかで生きてるんじゃないかって
拗ねて私の事待ってるんじゃないかって…。」
チャックが開いたままのリュックに目を向けると
紫色のマフラーが入っていて
Aさんもそれを見つめて、また涙を流した。
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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (
レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました！そう言っていただけてすごく嬉しいです！ (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
未(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました（ ; ; ）生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした！これからも愛読させていただきます！ (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年1月27日 20時
