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「楽しかった！」
すっかり満足したのかご機嫌なAさん。
でも旦那さんは相変わらず見つからなくて
もう明日は最終日ということもあってか
時折寂しそうな表情を見せてくる。
「旦那さんと一個ずつずれてるのかも。」
「そうかも、いつもあたしの一歩先を歩いてたから。」
そう笑いながら言うけどやっぱり寂しそうで
このまま貴方を抱きしめたら
拒否せずに受け入れてくれるのだろうか。
また人妻だぞって、痛くない拳が飛んで来るのだろうか。
この気持ちが未だに何なのかわからない。
恋かと思ったけど、今までの彼女には感じたことのない
宙に浮いたような気分でよくわからなくて頭を悩ませる。
「…Aさん？」
「ごめん、はしゃぎ過ぎたから
息がねちょっと…ごめんね。」
急にしゃがみ込むAさんに
慌てて俺も屈んで背中を優しく擦ると
真っ青な唇の口角を上げた。
「少し早いけど列車に戻りましょう。
今の時間ならもう乗っても大丈夫なはずですし。」
「ごめんね、せっかくの旅行だし蓮くんだけでも…。」
「Aさんがこんな状況じゃ
ひとりで観光したって心配で楽しめないよ。」
Aさんに振動を与えないようゆっくり背中におぶると
遠慮がちに細い腕を回してきた。
あまりの軽さと、今の症状に
嫌な予感が頭を遮りながら列車へ戻った。
「ごめん、部屋まで送ってもらって。」
相変わらず息が上がったままのAさん。
心配で動揺する俺に反して、慣れているのか
焦る様子もなく深い深呼吸を繰り返した。
「今日…話の続き…。」
「もういいです、それよりちゃんと休んでください。」
汗ばむAさんの額に、持っていたタオルを当てると
その腕を力なく掴まれ動きを止めた。
いつの間にか辺りは暗くなり、月がはっきりと見え始めている。
「聞いてほしいな。」
「Aさん…？」
「話したら、辰哉に会いに行くまでに
きっと心の整理がつくから。」
涙を流すAさんを見て、嫌な予感はどんどん確信へと変わる。
俺しかいないんだ、話を聞いてあげられる人は、
Aさんの願いを聞いてあげられるのは
旦那さんでもない、俺だけなんだ。
「じゃあ、ここで聞いてもいいですか？」
Aさんは小さく頷くと、
小さな声でゆっくり話し始めた。
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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (
レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました！そう言っていただけてすごく嬉しいです！ (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
未(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました（ ; ; ）生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした！これからも愛読させていただきます！ (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年1月27日 20時
