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「照がもうすぐ来るって。
 体調悪いのに走らせてごめん。」



椅子に座ったまま頭を下げると、
気まずそうに頭を掻いて私と目を合わせた。



「病気って、どんな?」



「…癌です。
 悪性腫瘍が、取っても取っても再発して
 いつ死ぬかわからない。」



癌だとは思っていなかったのだろう。
何か考え込むように黙り込むから
その沈黙が嫌で矢継ぎ早に話し続けた。



「どうあがいても、最後はみんなを悲しませちゃう。
 私にできることはその人数を少なくすることだけ、
 これ以上私を知る人を増やさなければいいの。」



せっかく落ち着いていた息が乱れて来て
こんなところにまで病気が進行してきているんだと
改めて実感し、恐怖が襲ってきた。
死ぬ覚悟なんてできていると思っていたのに。



「それは、無理だよ。」



「そんなことないです。」



「俺はもう君のこと知ってるし
 誰よりも君の事が好きだから。」



突然の告白が、酸欠で働いていない脳に入ってきて
保険医のデスクに置いてある水槽の金魚のように
口をパクパクと動かすことしかできない。



「またかあいい顔してる。」



なんでそんなに平気な顔でいられるのか
その好きという言葉にはどんな意味が込められているのか
聞きたいことは山ほどあるのに
思うように言葉を口にすることができない。




「悲しませるだとかそんな難しいこと考えないでさ
 好きなだけじゃダメ?
 俺は、もっと君と一緒に居たい。」



話すのはまだ二回目。
それも名前も教えず逃げてしまった私に
どうして好意をダイレクトに伝えることができるのか
やっぱり彼は宇宙人なのかもしれない。




「そんな簡単に…。」



「じゃあ友達から始めよう!
 改めまして、深澤辰哉です。
 君の名前は?」




右手を出して強引に自己紹介を仕切りなおす彼に
NOを突き出す選択肢はなくて



「…雪村Aです。」




「イメージ通りの名前だね。」





右手を差し出すと強く握られて
深澤さんはこちらを見て笑っていた。

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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました!そう言っていただけてすごく嬉しいです! (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました( ; ; )生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした!これからも愛読させていただきます! (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月27日 20時

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