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「これなんて読むの?」



「つるま、鶴舞公園…。
 もしかして漢字苦手?
 さっきもお便りの字読めてなかったし。」



「生きていく力だけはある。」



「答えになってないけど。」



観光用に渡された名古屋のパンフレットを見ながら
二人で歩く名古屋の街並みや空気は
ひとりで回っていた時とは違って
Aさんが隣にいるからなのか輝いて見えた。



「味噌カツやっぱり胃に来るわ。」



「今のちょっとおばさんっぽい。」



「どーせ三十路近い女ですよ。」



拗ねたのか頬を膨らませて少し前を歩くAさんの背中は
今にも抱き着いてしまいたくなるぐらいに愛おしい。



さっきからそんなことばかり考えている自分がわからない、
相手は人妻だぞとセルフで突っ込んで、
相変わらず少し前を早歩きで行くAさんに駆け寄り
隣に並んで少し腰を屈め、顔を覗き込んでみると
顔を赤らめて下を向いてしまった。



「そういう反応するからこういうのに言い寄られるんですよ。」



「わかってるならやめてよ。」



また痛くない拳が、今度は背中に攻撃してくる。



「ちょうどそこ凝ってたんですよ。」



「むかつく!」



さらに何度も叩かれるけど全く痛くない。
ふと、首元が寒く感じて触れると
あれだけ肌身離さずつけていたヘッドホンを
車内に忘れてきたことに気が付いた。
でもあのよくわからない不安はやってこなくて
普段は雑音だと遮断していた外の音が心地よく感じていた。



「早くぴよりん食べに行くよ!
 列車の時間間に合わなくなる。」



「やべ。」



デザートを頬張る彼女の姿はやっぱり幼くて
あの月明かりに照らされた儚い姿の面影は全く感じられない。
あれは俺が生み出した幻覚だったのだろうか、
そう思いたくなるほど、似ても似つかない雰囲気だった。



「結局ここにはいなかったなぁ…。」



「連絡は?」



「喧嘩してたら出てくれないの。」



「難儀だね。」





名古屋には結局いなくて、
この調子で本当に旦那さんは見つかるのかと心配になるけど
Aさんは特に焦っている様子はなかった。

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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました!そう言っていただけてすごく嬉しいです! (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました( ; ; )生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした!これからも愛読させていただきます! (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月27日 20時

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