検索窓
今日:8 hit、昨日:6 hit、合計:358,161 hit

12 ページ12




「あの、今は大丈夫なんですか?」



「なにが?」



「話の中で、癌って言ってたから…。」



さっきはとても聞ける状態じゃなくて
今の落ち着いた雰囲気の中ならと思い質問を投げかけた。
確かにAさんは少し細身で、
肌が白いからかも知れないけど顔色はいいとは言えない。
でもそれ以外は普通で、とても病人には見えないし
治療中といった感じでもなさそうだ。



「どうなるかはわからないけど
 今はおんぼろなりに生きてるよ。」



「そうなんだ。」





丸眼鏡をかけた白髪の店主が注文していた品を持って来た。
俺は珈琲とフルーツサンドで
Aさんはココアとワッフルサンド。
チョイスが何となく彼女らしいなと感じてまたにやけてしまった。



「何で名前教えなかったんですか?」



「その話は、観光中はなし!」



悪戯っ子みたいな笑顔を浮かべると
大きな口を開いてワッフルサンドを美味しそうに頬張った。
膨らんだ頬がリスみたいで愛らしくて
その姿を眺めながら飲んだブラック珈琲は甘みを感じた。



「じゃあ、違う質問ならいい?」



「許容範囲内なら。」



「年下ってあり?」



「まだそんなこと言うの?」



呆れたように笑うとココアを口に含んだ。
コロコロ変わる表情に見ていて飽きない、
特にディズニーのキャラクターみたいな眉の動きが
まるで生きているみたいで面白い。



「年齢は関係ないんじゃない?
 大切なのは精神年齢が合うかどうか。」



「じゃあピッタリかも。
 Aさん5歳ぐらいでしょ?」



「年上をいじるな。」



机の下で足を蹴られると、2人で顔を見合わせて笑った。
店内の雰囲気も相まってこの時間がとても愛おしく感じて
ずっとこのままならいいのにと無謀な願いをした。



クスクスと笑い声が聞こえて
厨房の方に目をやると、店主と奥さんらしい人が
こちらを見て優しく微笑んでいた。



「すいません騒がしくしちゃって。」



Aさんが頭を軽く下げて謝ると
2人は微笑んだまま首を横に振った。



「新婚旅行ですか?」



「そうです。」




答えた瞬間に頭にチョップが飛んできて
慌てて否定するAさんと大笑いする店主たちを横目に
この空間を噛みしめながらフルーツサンドを口に入れた。

13→←11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1048 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
786人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 深澤辰哉 , 目黒蓮
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました!そう言っていただけてすごく嬉しいです! (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました( ; ; )生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした!これからも愛読させていただきます! (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月27日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。