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あっという間に日は暮れて、
オレンジ色の空を徐々に藍色が侵食していく。
こうやって空を見上げるのはいつぶりだろうか、
誰に見せるわけでもないけど、携帯のカメラに空を写した。
「案外揺れないんだな。」
寝床はちゃんとした一室になっていて
ベッド横にある大きな窓からは
頼りない三日月の光が差し込んでくる。
初めての一人旅行で緊張しているのか睡魔が来ない。
起き上がって夜空を眺めていると、ふとパンフレットに
共有スペースがあると書いてあったのを思い出し
パーカーを羽織って向かってみると、先客がいて
窓側の壁に設置されたカウンター席で夜空を眺めていた。
「昼間の女の人だ…。」
同じツアーだったのか、勝手に運命を感じるけど
ひとりお酒を片手に三日月を眺める女性の横顔は
今にも消えそうなぐらい儚くて
扉から手を離し、部屋へと引き戻した。
「今日はどこ観光するの？」
「熱海だって。」
「いいな、お母さんも行けばよかった。」
口数が少ない俺は、ぶっきらぼうに今日の出来事を話すけど
電話口から聞こえる母親の声はやっぱり嬉しそうだった。
熱海、富士、浜松と静岡観光を自分なりに楽しむけど
やっぱり寝台列車で過ごす夜はなれなくて
孤独感に押しつぶされそうになる。
「あの、一緒にいいですか。」
「へ、あの、私ですか？」
「お姉さんしかここにいないですよ。」
共有スペースに足を運ぶと
またあの女性が月夜を眺めていて
持ち込んでいた酒を片手に隣の席に座ると
驚いた表情を見せた彼女は、俺を見ると微笑んだ。
「ナンパはお断りだよ。」
「えー、タイプなのに。」
「私、既婚者だから。」
そう言って顔の横に手の甲を前にして見せる左手には
月明かりに照らされた指輪が薬指に収まっていた。
「えー、人妻かぁ。」
「言い方…、とりあえず他当たってね。」
「いやでも、せめて友達になろうよ。
初日から気になってたんだよね。」
諦めの悪い俺に呆れた顔を見せる彼女は
ついに折れて首を縦に振った。
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ねこ - 思わず感動して大号泣してしまいました、こんな素敵な話に出会えてよかった。ありがとうございます。 (10月26日 18時) (
レス) @page35 id: 0201ad6d5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 拝読しました。途中から“もしかしたら。。。”という思いがよぎり読み進めており、最後の方は涙が止まりませんでした。いろんなことを考えさせられました。とても素敵な作品です。 (2023年1月18日 16時) (レス) @page35 id: 362aab2dda (このIDを非表示/違反報告)
マシ(プロフ) - 大号泣しました。最高の作品でした。 (2021年7月3日 1時) (レス) id: 4e17f70d50 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 未さん» 読んでいただいてありがとうございました！そう言っていただけてすごく嬉しいです！ (2021年4月2日 20時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
未(プロフ) - 今更ながら作品読ませていただきました（ ; ; ）生きるという言葉の意味を綺麗な言葉ながらに深く込められていた心に刺さる作品でした！これからも愛読させていただきます！ (2021年3月15日 11時) (レス) id: dd8bdcffd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年1月27日 20時
