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「眠れないから絵本読んで欲しい。」




初めての夜勤でそんな可愛らしいナースコールを受けて
懐中電灯を片手に病室を訪れると
男の子二人が一つのベッドに入り、絵本を抱きしめていた。




「はい、自分のベッドに戻ろうね。」




「ええー!!」




口元で人差し指を立てると
渋々自分のベッドへ戻り布団に入り込んだ。




二人のベッドの間にパイプ椅子を置いて座ると
受け取った絵本を開き読み聞かせる。
目を輝かせて話に入り込む二人は可愛くて
それと同時に胸が痛んだ。




「明日はママ来るかな。」




眠ってしまった子に布団を掛けると
まだ起きていた武くんが笑顔で問いかけてくる。




私は、この質問の正しい答えを知らない
武くんを傷つけたくない
かと言ってここで嘘をつけば余計に辛くなるだけだ。




「お仕事忙しいんだって、来てくれるといいね。」




「うん!」





今この瞬間も
刻一刻と武くんの命は削られていく。
この輝いている笑顔も、無邪気な姿も
今しか見ることができないのに
ご両親がお見舞いに来ることはなくて










しばらくして、武くんは息を引き取った。















どんなに私達看護師が頑張ったって
どんなに医療が進んだって
病気というものは、簡単に一つの命を奪っていく。




それを目の当たりにすることはわかっていたのに
いざ直面すると、辛くて堪らなかった。




「神崎さん。」




帰り支度をして病院を出ると
後ろから声を掛けられてゆっくりと振り返った。




「宮舘先生、」




「お疲れ様。」





宮舘先生は武くんの主治医だった。
私の隣に並び、自然と駅へ二人進みだすと
また溢れ出しそうになる涙を必死に堪えた。




「武くん、神崎さんの話ばかりしてたんだよ。」




「え?」





「お母さんみたいって、
 …ご両親は最後まで来なかったけど
 神崎さんがいたから、きっと最後まで笑顔でいれたんだと思う。」







宮舘さんの言葉に堪えていた涙が溢れて
そんな私の背中をただ優しく擦ってくれた。
心の支えになることが私の仕事だ
辛いけれど、ちゃんと乗り越えなきゃいけない
そう決心した矢先だった。

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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇‍♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時

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