最終章 憧れた天使にはなれなかった ページ32
＿Watanabe side＿
「この状況で寝るかよ…。」
看護師はどこででも寝れる
なんて冗談っぽく叔母が言っていたことがあったけれど
あながちそれは間違いじゃないのかもしれない。
疎遠だった友人から告白されても
普段から口の悪い同僚から可愛いと言われても
口を開けて呑気に眠れるのはもはや才能だな。
「ただでさえ敵はいたのに。」
本人は気づいていないだろうけれど
佐久間も俺達と同様の感情は抱えているだろう。
選ばれるのは一人だけ、この中の誰かじゃないかもしれないけれど
目に見えたライバルが二人もいるなんて
ただでさえマイナスからのスタートであろう俺に
果たして勝ち目はあるのだろうか。
「ほら起きろって、家着いたぞ。」
Aの家に到着して
体を優しくゆすって起こしてみるけれど
全く起きる様子がなくデジャブ感を覚える。
「またこのパターンかよ。」
好意を抱く相手の家に上がって
ベッドまで運ぶのに一体どれほどの葛藤があるか知らないだろ、
俺が理性のない馬鹿だったらどうするつもりなんだ。
それだけ信用されていると言われればそれまでだけれど
言い方を変えれば男として意識されていないという事なわけで
先の思いやられるこの現状に、大きく溜息をついた。
「宮舘先生も怪しんだよなぁ
なんでモテるんだよ。」
好意を寄せられるのは俺だけでいいだろ
なんてキザな事は口が裂けても言わないけれど
中々進展しない今の関係に苛立っていることもあってか
すやすやと眠るAの顔を見ていると
何とも言えない焦りが込み上げてくる。
「…何やってんだ。」
助手席に座るAに覆いかぶさろうとしたところで
自分がやっていることがいかに惨めかを自覚して
軽く頬を叩くと車から降りた。
「ほら、起きろって。」
おぶって階段を上がりつつ
俺の背中で眠るAに声を掛け続けるけれど起きない。
まさか死んでるんじゃ…なんて馬鹿なことを考えるほどに
動かないし目を覚ます気配もない。
家に着いて化粧を落としてスキンケアまで甲斐甲斐しくやって
流石に着替えさせることはしないけれど
ここまでやって起きないなんて言葉も出ない。
「…んん、」
「やっと起き」
「ありがとう…お母さん。」
やっと起きたかと思えば
そんなことを言い残して再び眠りに着いた
その表情は昨日と打って変わって穏やかだ。
「俺…母親かよ…。」
道のりは果てしなく長いぞ、俺。
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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (
レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました！お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです！こちらこそありがとうございました🙇♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています！私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年10月21日 19時
