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「「…」」
やっぱり私達が話すのは早かったんだと思う。
どちらも一向に口を開かず
ただただ肌寒い夜空の下で時間だけが過ぎていく。
街灯に照らされた目黒さんの表情は
何とも言えない顔色で、目を合わせることができない。
「その、」
「…」
「今日はおやすみ、なんですか」
「ずっと許せなかった。」
何とか絞り出した意味のない言葉は
目黒さんの一言で叩き落されて
心臓が大きく音を立てて痛んだ。
主語はなくても何に対して言っているのかなんて
安易に想像がついて言葉を失う。
謝るべきなのか、仕方ないじゃないかと自分を正当化するのか
またいつもの様に逃げるのか
正しい答えなんてないのはわかっているけれど
少しでも穏便に済ませられる選択肢を必死に考える。
「Aが辞めたこと、」
「…それは、」
「じゃなくて、
何も気づかなかった自分が許せなかった。」
思いもよらない言葉に顔を上げると
光に照らされている目黒さんの目には
うっすらと涙の膜が張っていた。
「よく考えたら、弱音を吐いたり
相談を持ち掛けるのはいつも俺だけだった。」
「そんなこと、」
「Aの本心を聞いたことなんて一度もなかった。
それなのに俺は、知ったつもりになって
だから突然看護師を辞めたことが理解できなくて
なんで、どうしてって責めるようなことばかり考えてた。」
鼻まで赤くして涙を流す目黒さんの姿は
学生の時と変わらなくて
一気に隅へと追いやっていた過去の記憶に引きずり込まれた。
「入学式でAと出会った時
甘ったれた奴だなと思ってた。」
「え？」
「話しかけて来たかと思えば一方的に話し始めて
天使の羽が似合う立派な看護師になりたいなんて
馬鹿げたこと言うやつだなって、すぐ潰れるだろうって。」
突然始まった私のディスりに
思考がついて行かず口を開けて固まってしまった。
一体何が言いたいんだ、泣きながらそんなことを言うなんて
やっぱり私の事が嫌いなんじゃないか。
「でも授業は人一倍真面目に聞いて
実技は危なっかしいけど一生懸命なのは伝わってきて
何より人のために動くことを当たり前だと思ってて
食いっぱぐれないために手に職つけたいなんて理由で進学した俺と違って
本気で看護師っていう職に就きたいんだって、すげえって」
「…。」
「憧れてた、Aに。」
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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (
レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました！お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです！こちらこそありがとうございました🙇♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています！私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年10月21日 19時
