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「よろしくお願いします。」




「はいはい。」




家を出る時間になって
車の助手席に乗せてもらいシートベルトをつける。

渡辺先生の車に乗るのは初めてで
教員同士とはいえ異性と二人きりの狭い空間の中
謎の緊張感から心臓の音が早くなる。




「やっぱ体調悪いか?」




「いや、そう言うわけじゃなくて
 とにかく安全運転でお願いします。」




「当たり前。」




そう言うと、渡辺先生はハンドルを握り
ゆっくりと車を走らせた。
いきなり寒くなったここ最近、
窓の外には厚着をした社会人が溢れ返っている。




「今日の実習終わったら、ちょっと時間空けて。」




「流石に飲めないですよ」




「そうじゃなくて
 連れて行きたい場所があるんだよ。」




いつにもなく真剣な表情でそう言うから
ただ事ではなさそうな雰囲気に黙って頷く。
何処に行くのか聞こうとしたところで
信号が赤になり車を停車させた。




「どこに行くのか聞いても大丈夫ですか?」




「それはまあ、着いてからという事で」



「…変なところじゃないですよね?」




「そんなふざけたことしねえよ。」




柄にもなくボケてみても
渡辺先生の表情は変わらなくて
何だかむず痒くなりそれ以上話すことはなかった。

大学に到着すると
私の背中を軽く二回叩き空き室へと向かって行った。
渡辺先生が何を考えているのかは分からないけれど
明日は休みだし、昨日は醜態をさらした挙句迷惑をかけたのだから
大人しく連れて行きたい場所とやらについて行こう。





「Aちゃん、あの」




「佐久間くんおはよう
 すぐ着替えてくるから、レポート準備しててね。」




更衣室へ向かおうとしたところで
既に白衣へ着替え終わっている佐久間くんがいた。
きっとまた、昨日の事を謝ろうとしてくれているんだろうけど
正直もうそっとしておいてほしくて
その話になる前にこちらから切り上げその場から立ち去った。




「あと一週間乗り越えれば、」





あと一週間でこの実習も終わる。
同じ病棟の担当になる可能性は少ないから
あの2人と会うこともしばらくはないだろう。





忘れちゃいけないけれど
早くこの苦しみから抜け出したい
そんな考えが頭の中を駆け巡って
そして辿り着くのはまた、逃げることだった。

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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇‍♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時

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