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第七章 思いは一緒 ページ10

_Sakuma side_




本人から聞いた真実は、噂とは全く違うもので
苦しそうにすべてを話すAちゃんの姿に
自分がどれほど酷い言葉を投げつけてしまったのかが
痛いほどにわかって、胸がチクリと痛んだ。




「ごめんなさい、俺」




「もう謝らないでよ
 そもそも噂の出どころは佐久間くんじゃないんでしょ?
 実習先に元職場があることはわかってたし
 いずれこのことが学生に知られるのも、何となく予想はしてたから。」





初めてAちゃんの弱々しい声を聞いた
初めてAちゃんの涙を見た
いつも学生のために頑張ってくれていた彼女が
こんなにも儚く、消えてしまいそうな姿をしていたなんて
今まで全く知らなかった。




「俺が悪いんです!
 先輩からこの噂聞いて
 本当かどうかも確かめずに佐久間くんに話したんです!」




「もう大丈夫だから。」




ラウールが深々と頭を下げると
Aちゃんは優しい笑みを浮かべそれをなだめる。
その姿を悔しそうに見つめるのは渡辺先生で
固く握られた拳が、いかに彼女を思っているかを物語っていた。



「もうこんな時間だし、二人とも寮に戻りな。
 私はもう大丈夫だから
 明日の実習に備えて早く休んで、ね?」




Aちゃんに背中を押されて部屋から出されると
寮に帰るよう促され、素直にそれに従った。

部屋に帰ってもどんよりした空気が流れていて
ラウールと二人、目を合わせて頷くと
実習の準備を終わらせて隣の部屋へ向かった。


















「いきなりごめん。」




「俺と康二は明日学内実習だから大丈夫だよ。」




迎え入れてくれた照は
何を聞くでもなく部屋に招いてくれて
ローテーブルの前にラウールと並んで腰かけると
温かい飲み物を差し出してくれた。




「康二、今風呂入ってるから
 もうすぐあがってくると思うけど。」




「ああ、そっか。」




「二人してどうしたんだよ。」




少し困惑した様子で問いかけてくる照に
さっきの出来事や噂の真相、全て話した。
どうやら噂の事自体知らなかったようで
話している間、ずっと驚いた表情を見せていた。




「ということで…」




「神崎先生、かなり重いもんしょってたんだな。」




「俺、どう顔向けすればいいかわかんなくて。」




俯く俺達を目の前に
腕を組み、今の話を飲み込もうとしている照。
その間も頭に浮かぶのはAちゃんの苦しそうな表情で
罪悪感が込み上げてくるとともに、看護師という仕事が怖くなった。

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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇‍♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時

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