・ ページ29
・
「お前ら近いから。」
二人で言葉を発することもなく泣き続けていると
後ろから腕を引かれて勢いよく立たされた。
腕を掴む白い手を目で辿っていくと
気だるそうな表情を浮かべた渡辺先生がいて
私をじっと見た後、視線を蓮くんへ向けた。
「全部ぶつけられたか。」
「…はい、思っていたことは全部言えました。」
まだ涙が止まらない様子の蓮くんは
目を擦りながら立ち上がり
渡辺先生からの問いに柔らかい笑みを浮かべて頷いた。
「Aは、もう言う事ねえのか?」
「私は…」
思っていることはすべて言えた。
当時の葛藤も、私なりの考えも
言い訳みたいになっていたかもしれないけれど
蓮くんにすべて伝えることが出来た。
「あ、まだ言ってないことありました。」
言う事はない、そう答えようとした時
ようやく泣き止んだ蓮くんが先に口を開いた。
首を傾げる私と渡辺先生にゆっくりと近づいてくると
今度は真剣な表情になり深く息を吐いた。
「俺達親友だろって言ったけど」
「…うん?」
「俺は、それ以上の関係になりたいって
学生時代からずっと思ってたから。」
「はぁ!?」
唐突のカミングアウトに
私よりも先に声を上げたのは渡辺先生だった。
「なんで渡辺先生が驚くんですか!」
「そんなん俺だって、
こんな彫刻みたいなやつが相手とか
え、まじかよ…はぁ!?」
「何言ってるんですか、怖いですよ。」
「俺は協力しないほうがよかったのか…?」
一人で話し続ける渡辺先生が
一体何を言っているのかは全く分からないけれど
何故私でなく貴方が焦るんだと突っ込みを入れたくなる。
「そういう事だからA、」
「え?」
「俺、今以上の関係になることも
また一緒に働くことも
諦めるつもりないから。」
「諦めないって、」
またこんな風に笑って話せるようになっただけでも奇跡なのに
ポンポンと衝撃的な言葉を投げかけてくる蓮くんに
全くもってついていけず顔が熱くなっていく。
1773人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時