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「神崎さんの中で、答えは出た?」




「…まだわからないです。」




「そっか、そうだよね
 そんなにすぐ解決できるなら悩まないよ。」




「でも、引っかかってたものは取れた気がします。」





しばらく談笑した後
暗くなってきたからとお開きにすることになった。
診療所へ戻る道のりでそんな会話を繰り広げていると
宮舘先生がゆっくりと立ち止まり、私も足を止めた。




「宮舘先生?」




「神崎さんは自分自身を過小評価し過ぎだと思う。」




「え?」




突然の発言に固まっていると
宮舘先生は笑みを浮かべて私の右手を両手で包み込んできた。
冷え性の私とは違い凄く温かくて
何故か涙が溢れそうになった。





「神崎さんは凄く頼りになる
 とても素敵な看護師さんだよ。」





「…っ、」




「これからもずっと…俺の中で神崎さんは
 背中に大きな羽を持った、立派な白衣の天使だよ。」





ちょっとクサいセリフだったかな
なんて言って、宮舘先生はおどけて見せるけど
涙がとめどなく溢れて、声を上げ泣いた。





現役時代からずっと不安だった
何をするにも、私はちゃんとできているのだろうか
私は本当にここにいていいのかと、常々考えていた。





ちゃんとできているよって
ここに居てもいいんだよって
確かな言葉が欲しかった。







「鏡を、見るたびにっ、
 白衣が似合わないなって…っ」




「そんなことないよ、凄く似合ってた。」





「人殺しって言われた人間が
 看護師を名乗っていいのかなって…っ!」





「武くんの件は、本当に誰も悪くない。
 神崎さんは人殺しなんかじゃない
 ちゃんと最後まで向き合って、懸命に救おうとしていた。」






どの言葉も受け付けられなかったのに
今は宮舘先生の言葉一つ一つが
すんなりと胸に落ちてくる。




涙を左手で拭うけれど、
追いつかないぐらいまた溢れ出て来て
宮舘先生はそんな私の手を引っ張ると
優しく包み込むように抱きしめてくれた。







「ゆっくりでいいから、前に進んでいこうね。」





「…はいっ、」










脳裏に浮かぶのは、武くんの笑顔で
私の記憶の中に閉じ込めてしまっていた彼を
ようやく見届けることが出来たような気がした。



















武くんの死を一番受け入れられていなかったのは、私だった。

第九章 前を向いて歩き出す→←・



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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇‍♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時

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