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「私病院にかかるほど悪くは…」



「そうじゃねえよ、ちょっと待ってろ。」





そう言って診療所の中へ入っていってしまった。

待っていろと言われても
入口前で突っ立っているのも邪魔だろうしと端に寄る。
何もわからないまま全く知らない場所で一人になるのは
少し心細くて落ち着かない。





「渡辺先生が体調不良?
 一人で病院に行けないタイプじゃないよな…
 でも全く心当たりないし」





一人診療所の前でブツブツと呟く姿は
傍から見れば不審者にしか見えないだろう。
冷たい風が頬をかすめて身を震わせると
早く戻ってこないかなと思いながら自分の足元を見つめた。





「二回目の失職は流石にな、」




もし今の大学を退職したら、親が黙ってないだろう
恐らく地元に呼び戻されてお見合いさせられる。
今でさえ結婚しろとうるさく言われているのだから
絶対このタイミングで行動に移されそうだ。

なんてこの先の事をぼんやりと考えていると
診療所の扉が開く音が聞こえて
私の視界に季節外れのサンダルが入ってきた。



















「渡辺先生遅いです…えっ、」




渡辺先生が履いていたサンダルだったから
戻ってきたのかと思い顔を上げると
懐かしい笑顔が私を見つめていた。




「宮舘先生、」




「神崎さん久しぶり。」




「え、あ…え?」




「ここで働いてる看護師から
 神崎さんに会って欲しいって連絡が来たって聞いて。」





再会を果たした宮舘先生は
最後に会ったあの日とは打って変わって
イキイキとしたはつらつな笑みを浮かべている。

いまいち目の前にいる宮舘先生に現実味が持てず
頬を軽くつまんでみると確かに痛みを感じて
そんな姿を見た彼は楽しそうに笑った。





「昔と変わってなくてよかった。」




「お、久しぶりです。」




「凄く心配かけちゃってたみたいでごめんね
 あの時はその、冷静な判断ができなくなってたから。」




宮舘先生は少し気まずそうに人差し指でこめかみを掻くと
深く息を吐いて再び私と目を合わせた。




「ここだとあれだし
 ちょっと先に公園があるからそこで話そうか。」




「でも、渡辺先生は」





私をここへ連れて来た渡辺先生はどうしようと思っていると
診療所の中からその本人が現れて
私達を交互に見ると何かを察したらしく
小さく頷いて車を停めた方に歩いて行った。

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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました!お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです!こちらこそありがとうございました🙇‍♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています!私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました! (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年10月21日 19時

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