口は禍の門 前編

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「今日の夜、行ってこようと思う。」




翌朝になり、お通夜状態で朝食を取る中
最初に食べ終わった蓮先輩が食器をテーブルに置き
私たち一人一人に目を合わせそう言い放った。




「今日、お祭りがあるみたいなんだ。」




「お祭り…」





「町の人はみんな参加するらしい、
　深澤さんも警備で一日中参加してるって。」





そういえばラウくんと仲良くなった日
お祭りに行こうと誘ってくれていた。
約束は守れそうにないかもしれない
そんなことを考えている場合ではないのだけれど
楽しみにしていた自分もいたから少し胸が痛む。





「何でそんなこと知ってんの？」





「この町の事何も知らないから
　色々調べるために朝、周辺を歩いてたんですよ。
　そしたら深澤さんが町の人と話しているのを見つけて
　隠れて聞き耳立ててたらそんな会話が聞こえてきたんです。」





「ふーん…。」






翔太先輩は相変わらず不貞腐れている。
気持ちはわからないでもないけれど
みんなのためにと動いてくれている蓮先輩に
その態度はないだろうと、無言で頭を叩いた。





「いでっ！！」





「やっぱり私も行きます。」





「叩いといて何もなしかよ！
　てかAまで行ったら俺一人じゃん！」





「一緒に来たらいいじゃないですか。」





「無理だってわかってんだろ！」






ビビりもここまでくると厄介だ。
蓮先輩に視線を向けると目が合って
困り顔で笑みを浮かべる姿に眉を動かした。





「あのさ、そのことなんだけど！」





次に口を開いたのは大介先輩で
突然の発言に全員の視線を集めた。





「翔太とAはお祭りに参加しといてよ！」





「はぁ！？
　こんな時に遊んでる場合かよ！」






「翔太落ち着いて。
　お祭りに来てるふりして
　警備にあたってる深澤さんとか
　町の人が不審な動きをしてないかとか見ててよ。」







大介先輩の提案に、私と翔太先輩は目を合わせた。
確かにそれはいい考えだ
若い人や帰省してきた人もいるであろう祭りの中で
堂々と私達に危害を加えることはないだろう。





お祭りだから騒がしいだろうし雰囲気も明るいだろう
翔太先輩が怖がる要素もない。





「ね、名案でしょ？」





「俺もそれに賛成です。」






大介先輩に同調する蓮先輩に
私達二人が反論する理由もなく
今夜に備えて全員が身構えた。

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