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＿you side＿
「もう帰っちゃったかな…っ」
走っても走っても薫は見当たらない。
駅に辿り着いても彼女の姿はなくて
立ち止まると酔いが再び襲って来て立ち眩みがする。
とりあえず息を整えようと
改札前のベンチに腰掛け固く目を閉じた。
「うーん、なんだろ。」
さっきからずっとモヤモヤしている。
薫の言葉も何か引っかかるし
今日羽織っていたベージュのトレンチコートや
珍しく下ろしていた髪型も何故かつっかえる。
「また今度返すしかないか…
薫が家に着くまでに雨が降らなきゃいいけど。」
灰色の雲が空を全部埋め尽くしていて
手に握っている折り畳み傘をじっと見つめる。
こればっかりは仕方ない、そう思うことにして立ち上がると
見覚えのある鞄が目に飛び込んできた。
「あ、薫…」
こちらに気づくことなく
私に背を向けて改札へと向かおうとする薫。
その後ろ姿は見覚えがあって
それは思い出したくもない姿だった。
「…いやいや、
ベージュのトレンチコートなんて最近流行ってるし
髪おろしてる人なんていくらでも、」
なんて自分に言い聞かせても
体は動かないし冷や汗は止まらない。
しばらくその背中を見つめていると
向かいの改札からこれまた見覚えのある顔が歩いてきた。
「…ああ、そういう事。」
薫は向かいからくるあいつに気づいて
小走りで駆け寄ると笑顔で会釈をする。
あの後ろ姿は間違いなく
翔太と抱きしめ合っていたあの女性の後姿そのもので
浮気疑惑の原因ともなる張本人だ。
「あの時も私服だったなぁ…」
私と出かけるときは
いくら言っても法衣を着て来たのに
あの女性と抱き合っていた時も今も
シンプルな、普通の服装だ。
“Aが好きだった時の彼はもういないんだよ、きっと。”
私を好いていた時の翔太はいない
今は薫が好きだから
彼女はそう言いたかったのだろうか
私を襲ってきたモヤはこれだったんだ。
二人に近づけば驚いた表情でこちらを見つめてくる、
持っていた折り畳み傘を二人に向かって投げれば
大粒の雨が降り出してきた外へと駆け出した。
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山西 陽朔 - 素晴らしい小説ですね!次回作は、南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏できることを物語にするのはどうでしょうか。 (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - (名前)さん» ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります☺️ (2022年4月21日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ayaさん» お久しぶりです🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです、後々明らかになっていくので最後まで御付き合い頂ければ嬉しいです！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - さんたさん» ただいまです！！またこれからよろしくお願いします🙇♀️ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - かなさん» ただいま戻りました！過去作読み直していただけて嬉しいです☺️またよろしくお願い致します！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年4月3日 19時
