第五章 鬼の念仏 ページ38
＿you side＿
“こっち来て友達とも中々会えないでしょ”
深澤さんの言葉でふと考えた。
こっちに来てから翔太の事もだけれど
何より仕事や新しい生活環境に慣れることに精いっぱいで
頻繁に薫と連絡を取っていたのに、今では滞っている。
「前もこんな感じで疎遠になったんだよな…。」
人というのは歳を重ねるごとに
ライフステージが変わっていく。
私は周りより早く結婚をして子供を産んで
一足先に足を進めたのだけれど
それと同時に数人の友人と疎遠になった。
薫はその一人で
結婚してから仕事終わりや休日の付き合いがなくなり
仕事を辞めるとぱったり連絡を取らなくなってしまった。
「寂しいなぁ。」
でも今は違う
ここでとぎらせまいと薫にラインを送ると
休日という事もあってかものの数分で着信音が鳴り響いた。
«もしもし？»
「あ、久しぶり…」
変に緊張してしまっているこちらとは反対に
私の第一声を聞くや否やマシンガンのように話し出す薫。
気まずさを感じていたのは私だけだったようで
心配してくれていたことに胸が熱くなった。
「そっちはどう？」
«Aがいなくてすっごい退屈、そっちは？»
「慣れないこともあるけどだいぶ落ち着いてきたよ
深澤さんとか他の上司もよくしてくれてるし。」
«そっか、なら安心だ。»
近状報告と世間話
それだけでも楽しくて嬉しくて
時間はあっという間に過ぎていく。
時間を見れば針は5の数字を指そうとしていて
せっかくの休みに長電話するのも迷惑かもしれないし
話を切り上げようとすると向こうが先に口を開いた。
«確か千葉支店って〇×にあるよね？»
「そうだけど…」
«社宅って言ってたしそこから近い？»
「会社からは徒歩で10分ぐらいだけど…」
突然何かと思えば
電話の向こうで何かガサゴソと物音がする。
何事かと思いつつも待っていると
よしっという小さな声が電話口から聞こえた。
«今日久々に飲みに行かない？
うちから電車乗り継げば一時間で着くし
急だけどダメかな？»
薫には軽く婚約破棄の事情を話していたし
誰にも相談できない胸の内を話せば
少しは楽になるかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2232人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - 素晴らしい小説ですね!次回作は、南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏できることを物語にするのはどうでしょうか。 (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - (名前)さん» ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります☺️ (2022年4月21日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ayaさん» お久しぶりです🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです、後々明らかになっていくので最後まで御付き合い頂ければ嬉しいです！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - さんたさん» ただいまです！！またこれからよろしくお願いします🙇♀️ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - かなさん» ただいま戻りました！過去作読み直していただけて嬉しいです☺️またよろしくお願い致します！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年4月3日 19時
