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あれから五年の月日が経ち
あの時貰った婚約指輪は
恐らく物置の棚で埃をかぶって寝ている。
「あう、ぎ、うぎゃぁぁ！！」
「はいはい、」
私の腕の中で、父親譲りの甲高くて悲鳴に近い泣き声を上げているのは
離乳食デビューを果たした我が息子で
見事なハイハイを披露する我が家の小さな怪獣だ。
「何がそんなに悲しいの。」
何をしても泣き止まない
よく泣くから何処か体が悪いんじゃないかと不安になるけれど
病院に行っても異常はなく
優しそうな看護師さんからたまには休んでねと私が労われてしまった。
「ほら、亜藍くん桜だよ。」
縁側を降りて庭にそびえたつ大きな桜の木に近づいて
初めて迎える春を体感できるようにして見るけれど
全く泣き止む様子はなく胸が痛む。
“お父さんに協力してもらって
たまには息抜きしてくださいね。”
「お父さんね。」
そんなものうちには存在しない。
我が息子が生まれたあの日
産んだ覚えのない長男は誕生したけれど。
「A〜、靴下がない！」
「そこに用意してる。」
「あった！っていた！！
ねえ履かせて最近太ったからこの格好でしゃがめないんだよ。」
何とか靴下を自力で履こうと試みた翔太は
盛大に転んでおでこを赤く腫らしている。
情けない声で涙目になりながら私を見つめるこの煩悩野郎が
亜藍と同時に誕生した産んだ覚えのない長男
名前は翔太くん、ただいま29歳。
「この状況見てわかんない？」
「え、なんで泣いてんの！？」
ようやく気付いたのか四つん這いでこちらに近づいてくる。
その姿にイライラしつつも怒る気力もなく
痛む頭を押さえて咳払いをした。
「仕事は？」
「げ、もうこんな時間じゃん
行ってきます！」
結局裸足のまま
法衣にサンダルという謎のスタイルで庭に出ると
私の頬にキスをして走り去って行った。
「…ああ、ごめんね。」
いつまでたっても泣き止まない亜藍を抱えて
再び家の中に戻りひたすらにあやす。
この子って私と翔太との子だよね？
そう聞きたくなるほどに
翔太は育児に参加しない。
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山西 陽朔 - 素晴らしい小説ですね!次回作は、南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏できることを物語にするのはどうでしょうか。 (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - (名前)さん» ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります☺️ (2022年4月21日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ayaさん» お久しぶりです🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです、後々明らかになっていくので最後まで御付き合い頂ければ嬉しいです！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - さんたさん» ただいまです！！またこれからよろしくお願いします🙇♀️ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - かなさん» ただいま戻りました！過去作読み直していただけて嬉しいです☺️またよろしくお願い致します！ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年4月3日 19時
