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_you side_




「あと少しだぁ…」




オフィスには当然誰もいなくて
真っ暗なこの空間は少し怖い。
でも思いのほか早く終わりそうな目の前の資料に
少しだけ気が抜けて欠伸をした。




「21時か、
 深澤さんにラインしとかなきゃ。」





いかに早く終わらせるかだけしか考えていなくて
まだ深澤さんにラインをしていなかった。




スマホ見ると深澤さんからのメッセージが届いていて
随分と前のものだし今頃出来上がっているかもしれないからと
申し訳ないと思いつつも明日返事を返すことにした。





「この調子でいけば22時には終わる、」




「阿部さん!!」





聞こえるはずのない誰かの声に
びくりと肩を揺らし入口の方へ顔を向ける。
そこには肩で息をした優香さんの姿があって
その様子を見ている私はきっと間抜けな顔をしているだろう。




「お誕生日…」




「息子、今寝かしつけて来て、その
 遅くなってごめん!」





そう言い切った後少し呼吸を整えて
優香さんは私の隣のデスクに腰を下ろし
机の上の資料を半分持ち上げた。





「戻ってきてくれたんですか?」




「もちろん、元々私の仕事だし
 こんな時間まで本当にごめん。」




「気にしないでください。」




優香はすぐに仕事に取り掛かり
私も黙って作業を進めた。
二人でやればすぐに終わる量だと光が見えて来て
さっきよりも仕事がはかどる。








「息子、凄く喜んでた。」




「え?」




「下の子産んでから、
 どうしても上の子に我慢させちゃうことが多くなって
 復帰して、仕事と家事の両立でさらに寂しい思いさせちゃったから
 誕生日は盛大にお祝いしてあげたくて。」







パソコン画面から目を離すことなく
小さな声で話し始めた優香さんの声は震えていて
どう答えればいいかわからず黙り込んでしまう。




「母親失格だ、
 自分のキャパが狭いのが悪いのに
 子供に我慢させちゃって。」





「そんな、こと」





「阿部さんにまで迷惑かけちゃって、ごめんね。
 予定潰れちゃったよね。」






母親失格だと言うけれど
逃げ出した私からしてみれば
優香さんはとても大きく見えた。

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山西 陽朔 - 素晴らしい小説ですね!次回作は、南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏できることを物語にするのはどうでしょうか。 (2023年4月30日 18時) (レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - (名前)さん» ありがとうございます!最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります☺️ (2022年4月21日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ayaさん» お久しぶりです🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです、後々明らかになっていくので最後まで御付き合い頂ければ嬉しいです! (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - さんたさん» ただいまです!!またこれからよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - かなさん» ただいま戻りました!過去作読み直していただけて嬉しいです☺️またよろしくお願い致します! (2022年4月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年4月3日 19時

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