10 ページ10
・
「どこ行くの？」
「佐久間が行きたいところがあるって嘘ついて
私を誘拐しようとしてるところだからわかんない。」
「佐久間くんやるね〜。」
深澤さんは眼鏡のブリッジを押しあげ
俺の方を見ながら笑いだす。
あの日のことを気にしている様子はなく
肩の力が一気に抜けて変な声が出てしまった。
「誘拐じゃないですよ！
行く場所が決まってないのは事実ですけど…。」
「なんか佐久間くんらしいというか…
暑いしうちの店おいでよ、ね？」
深澤さんからの助け舟でお店に向かうと
相変わらず異世界の様な店内に圧倒されながら
初めて来た時と同じテーブル席に腰かけた。
「じゃあ俺厨房戻るから。」
ガタイのいい男性は、前にAちゃんが教えてくれた
このお店のもう一人の店員である岩本さんらしい。
二人で買出しに行っていたようで
大量の買い物袋を抱え厨房へと行ってしまった。
「今日は何食べる？」
「じゃあ…カレーで！」
「はいはいカレーね。
Aちゃんは？」
「同じの…。」
またAちゃんは俺と同じものを注文する。
何だか小さな子供のように見えて来て
可愛いなと思いつつ、暑さを紛らわせるためお冷を飲み干した。
「Aちゃんもカレーで良かったの？」
「…佐久間が美味しそうに食べるから。」
狙っているのか天然なのか、
恐らく赤くなっているであろう顔を隠すように
出入り口の扉に視線を向けると
小さな子供たち数人が浮き輪やゴーグルを持って走って行った。
「近くに大きなプールがあるんだよ。」
「そうなんだ！
もしかしてウォータースライダーとか、」
そう言いかけた時、目の前にカレーが置かれて
見上げると深澤さんがこっちを見て笑みを浮かべていた。
足に関する話はしないように、そう言っていた彼の事だから
きっと水泳を連想させる話をしないよう遮って来たのだろう。
向かい合って座るAちゃんに目を向けると
唇を噛みしめながら頬杖をついていた。
辛さを含んだような表情ではなく
何処か悔しそうな、悲しそうな雰囲気をまとっていた。
「じゃあごゆっくり。」
俺に無言の圧のようなものをかけると
深澤さんはカウンター内へ戻ろうとした。
「そのプールさ、ウォータースライダーとかあるの？
結構泳げたりする？」
Aちゃんにそう問いかけると
深澤さんの足はピタッと止まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 659人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぐたろう(プロフ) - ぴくみんさん» 読んでいただきありがとうございました！！書くこと自体迷っていたお話だったのですが、書いてよかったです。次も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ゆりあさん» ありがとうございました！凄く迷いながら時間をかけて書いたお話なので、そう言っていただけて凄く嬉しいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - こころさん» 読んでいただきありがとうございました！そう言っていただけて凄く嬉しいです！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ぐりーんかれーさん» ありがとうございます！楽しんでいただけて凄く嬉しいです。次回も頑張りますのでよろしくお願いします！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 名前さん» ありがとうございました！受け取りての方によって違う感じ方を楽しんでいただければと思い書いてみました。次のお話も頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年8月10日 19時
