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「佐久間にだって自分の人生がある
仕事だってあるし四六時中一緒に居られるわけじゃないだろ？」
「…うん。」
「その子が好きじゃないなら
いずれ結婚を意識する女性が現れて
籍を入れて家庭を持つかもしれない。
自分が夫、父の立場になっても
その子が死を選びそうになったら駆けつけんの？」
車椅子に乗ったおばあさんが無事に信号を渡り終えると
翔太は俺をじっと見つめた。
こんなタイミングで料理が到着して
手を付けられずにいる俺を他所に、翔太は箸を持った。
「人の気持ちは簡単に変えられない。
ましてや一度死を意識した人間を
前向きに生きていこうと思えるまで変えるなんて…
佐久間がしてることは偽善なんだよ。」
「そうかもしれないけど…、」
「もし佐久間がその子を好きなら
心の底から生きて欲しいって思ってるなら
俺は止めない、協力もする。
でも事情を知ってしまった情でそういう接し方をしてるんなら
今すぐ手を引け。」
翔太はそれ以上責めることも問いただすこともなく
少し冷めてしまった昼食に箸を伸ばした。
正直自分の気持ちが分からなかった。
Aちゃんへの気持ちが情なのか好意なのかも
何故自分がこんなに必死になっているのかも
何気ないふとした瞬間に彼女の顔が浮かぶ理由も
全くもってわからなかった。
「午後はちゃんと仕事しろよ。」
「わかってる…。」
「キツイこと言ってんのはわかるよ
でもちゃんと考えろ。」
翔太は俺の背中を優しく二回ほど叩くと
頭を掻きながら会議室へ向かった。
返してもらったハンドブックを横目に
デスクへ腰を掛けパソコンの電源を入れる。
自分がやっていることは偽善だという言葉に
思い当たる節がいくつもあって納得してしまった。
「好き…なのかな。」
自分の事なのにはっきりしない感情と向き合おうと
家に着くまでの道のりで必死に頭を回転させる。
でも鬱陶しいほどの蝉の大合唱に妨害されてしまい
いくら考えても答えは導き出せない。
「佐久間、」
「駄目だ…暑すぎて幻覚まで見えてきた。」
「勝手に幻覚にしないで。」
目に前に現れたのは悩みの原因でもあるAちゃんで
あんなにうるさかった蝉の鳴き声が聞こえなくなり
彼女の澄んだ声が耳を突き抜けた。
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ぱぐたろう(プロフ) - ぴくみんさん» 読んでいただきありがとうございました！！書くこと自体迷っていたお話だったのですが、書いてよかったです。次も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ゆりあさん» ありがとうございました！凄く迷いながら時間をかけて書いたお話なので、そう言っていただけて凄く嬉しいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - こころさん» 読んでいただきありがとうございました！そう言っていただけて凄く嬉しいです！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ぐりーんかれーさん» ありがとうございます！楽しんでいただけて凄く嬉しいです。次回も頑張りますのでよろしくお願いします！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 名前さん» ありがとうございました！受け取りての方によって違う感じ方を楽しんでいただければと思い書いてみました。次のお話も頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年8月10日 19時
