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_Sakuma side_



あんなに寒かった冬も
例年より少し早く桜が開花した春も
記録的な雨量を叩き出した梅雨も
あっという間に通り過ぎて行って
順番が巡ってきた夏の空が容赦なく照り付けてくる。



「大介、帽子!
 熱中症で倒れるよ。」



「はーい、
 母さん焼けちゃうから家入っときなよ
 荷物運びは俺やるから!」



「ありがとう。」



母から受け取ったピンクのキャップを被り
トラックから荷物を取り出しては家に運ぶのを繰り返す。
額に滲み出た汗を腕につけていたリストバンドで拭き取ると
玄関前の段差に腰かけてペットボトルに口をつけた。



「暑過ぎる、これは異常事態だ
 これじゃあ八月入ったら溶けるかも…」



「何馬鹿なこと言ってんの。」



「いでっ!」



後ろから頭部に衝撃が走って
両手で押さえ少し大袈裟に痛がりながら見上げると
紙袋を持った母が俺を見降ろしていた。



「はいこれ。」



「え、俺誕生日じゃないよ?」



「ばか、引っ越しの挨拶。」



顔の前に差し出された紙袋を受け取ると
表札を抜けて左右を見渡した。
右隣はお店のようだし挨拶はいらないかと
くるっとつま先を左側に向けて歩き始めた。



「留守?
 すいませーん!」



室外機が回っているからいると思ったのだけれど
数回インターホンを押しても応答はない。
無理に今日挨拶することもないかと家に戻ろうとした時
見上げた先の窓からロープに首をかけようとしている人影が見えた。



「だ、だめだめだめ!!!」



慌てて扉に手をかけると
不用心にも鍵が開いていて中に入ることができた。
焦っていた俺は二階へ駆け上がって
手当たり次第部屋の扉を開けていく。



「だめー!!」



「え、うわっ!!」



最後の部屋の扉を勢いよく開けると
恐らく女性であろう窓から見えた人が
椅子を蹴ろうとしていて
慌てて飛びつくようにそれを阻止すると
二人並んで床に倒れ込んでしまった。



「だ、誰!?」



「いや、決して怪しいものでは…!!」



「不審者っ!?」



こんなにも最悪な出会い方があるだろうか、
でもこれが彼女と初めて会った時の事で
後のも先にもこれを超えることはないだろう。

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ぱぐたろう(プロフ) - ぴくみんさん» 読んでいただきありがとうございました!!書くこと自体迷っていたお話だったのですが、書いてよかったです。次も楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ゆりあさん» ありがとうございました!凄く迷いながら時間をかけて書いたお話なので、そう言っていただけて凄く嬉しいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - こころさん» 読んでいただきありがとうございました!そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ぐりーんかれーさん» ありがとうございます!楽しんでいただけて凄く嬉しいです。次回も頑張りますのでよろしくお願いします! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 名前さん» ありがとうございました!受け取りての方によって違う感じ方を楽しんでいただければと思い書いてみました。次のお話も頑張ります! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年8月10日 19時

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