とにかく一発殴らせろ。 前編

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「…それ、本当に浮気だけが原因なのか？」



「へ？」




烏龍茶片手に出来るだけ細かく詳細を話していくと
照は煙草の煙を吐き出しながらそう呟いた。
浮気意外に原因があるのかと考えてみたけれど
全く身に覚えがないため首を傾げる。



「お前の事だから、
　浮気意外にもAちゃんに酷いことしたんじゃねえの。」



「まさか！
　俺ちょー優しいで有名だよ？」




「確かにふっかは優しいよ、
　でもそれだけじゃ結婚生活なんてうまくいかねえよ。」



「…一度失敗したやつの話は深いね。」



なんて呟くと肩に拳を叩きこまれた。
照はこう見えてバツイチで
だから言葉の重みが半端じゃない。



「例えばだけど、
　家事の分担とかしてた？」



「おう！
　ごみ捨ては俺の仕事」



「…それだけ？」



「だって家事って女性の方が向いてんじゃん。」





照は駄目だこりゃと呟いて
煙草を灰皿に押し付け焼き鳥を頬張った。
確かにAは家事をほとんどこなしてくれていたけど
それは彼女からの申し出だった。




「最初のころは家事してたよ？
　でも皿は割るし洗濯は色移りするしご飯は言わずもがな…
　それを見てAが、私がやるから大丈夫だよって…」



「お前その言葉のまんま真に受けたの？」



「だって大丈夫だよって…」




「あのさ、Aちゃんだって働いてんだよ？
　フリーランスで時間の融通が利くとはいえ…。
　そう言われても一緒に、練習だと思って手伝うとかしてさ
　…なんでここまで言わなきゃわかんないわけ？」




ぐうの音も出なくて俯いてしまう。
そう言えばゴミ捨ても最初はAがしてて
しばらくして分別は私がするからゴミ捨て場まで持っていってって
少し呆れ気味に言われたんだっけ。



思い返せば心当たりなんて山ほどあって
両手で顔を覆うとまた照に溜息をつかれた。



「これは俺だけじゃ無理だな。」



「照まで見放さないで…」




「全部ふっかの浮気が原因なんだから泣くな、
　泣きたいのはAちゃんの方だよ。」






頭の中ではそうだとわかっていても
自分のしでかしたことの重大さや
ありがちな失って初めてわかったAという存在の大きさに
心が折れてしまった。

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