・ ページ6
「退院おめでとう。
今日一日だけ安静にしたら
明日から学校には行っても大丈夫だからね。」
あっという間に体は回復し
病室で荷物を片付けていると、担当医が顔を出してくれた。
明日から学校に通うとなれば、
ボロが出ない様に振舞うのが大変だろうなと思うと
ため息が止まらなくなった。
「周りの人の記憶がなくなって不安だと思うけど
結ちゃんもいるし、
もしかしたら記憶が戻るかもしれないから
無理のない範囲で学校には行ってほしいな。」
不安が伝わったのか、一緒に話を聞いていたお母さんが
背中を擦りながら微笑んだ。
記憶がないということになっているんだから
これから自分の思う、宮舘Aさんを演じればいい。
やっと手にした幸せを、逃がさない様に。
「下にお父さんと涼太…あ、お兄ちゃんがいるから
そろそろ向かおうか！」
「うん、あの、私って
その…お兄ちゃんって呼んでた？」
「うーん、涼ちゃんって呼んでたわね！
そう呼んであげると喜ぶと思うわよ。」
二人で病院のエントランスに向かうと
正面に止まっていた車からお父さんとお兄さんが出て来て
笑顔で出迎えてくれた。
「退院おめでとう、えっと…。」
お父さんが困ったようにお兄さんを見ると
居心地の悪い沈黙が生まれた。
お兄さんは少し苦しそうな顔をした後、また笑顔に戻り、
私の目の前まで歩いてきた。
「宮舘涼太です。
いきなりお兄ちゃんって言われても
ちょっと困っちゃうよね、ごめんね？」
何も悪くないのに謝る姿を見て
チクリと胸が痛んだ。
「こ、こちらこそごめんなさい…。」
「…暗い話は終わろうか！
そんな改まって敬語なんか使わなくてもいいよ。
ゆっくりでいいから、慣れていこう。」
優しい雰囲気に包まれたお兄さんは
一瞬にして私の不安を取り払ってくれた。
この子に生まれ変わってから出会うのは
優しくて素敵な人ばかりだ。
「わ、私頑張るから、
よろしくね、涼ちゃん…。」
さっき教えてもらった呼び方を口にすると
急に恥ずかしくなって下を向いてしまった。
「改めて呼ばれると照れるね…。」
お兄さん…涼ちゃんも恥ずかしくなったようで
耳を赤くして頭を掻いていた。
でもその姿を見て、両親は嬉しそうだった。
今日から私は宮舘A。
嫌われていた惨めな佐倉Aはもう死んだんだ。
不安なんて感じる必要はない、
この新しい人生を存分に楽しむんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいちゅん(プロフ) - ぱぐたろうさんの世界観が好きです。 (2021年1月25日 0時) (
レス) id: 3613c412bc (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます！うれしいです、励みになります。今日からまた更新しますので是非見てください(^▽^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - りささん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます！そう言っていただけるとすごくうれしいです！りささんもお体ご自愛下さい、更新頑張ります(^^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - Roseさん» ありがとうございます、励みになります！Roseさんもお体お気をつけてください!(^^)! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - しおさん» ありがとうございます！本日更新しますので是非見てください(^^)無事に楽しめました！ (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年1月13日 20時
