飛 び 込 め ＿前編＿

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＿you side＿


「Aちゃん、また最近元気ないね。」



今朝、結ちゃんから風邪をひいたと連絡があり
しばらくラウちゃんと二人きり。
自習時間で暇を持て余した私は
机に肘をついて窓からグラウンドを眺めていると
隣にいるラウちゃんが声をかけてきた。



「ちょっとね。」



「あ！今日のお昼屋上で食べる？
　たまには違うところで気分転換にさ！」



屋上、その一言に動揺して
ペンケースを落としてしまった。
慌てて二人で拾い上げると、ラウちゃんは心配そうな顔をしている。



「Aちゃんって、もしかして高所恐怖症だっけ？」



「へ！？あ！うん！
　そうなの！ここの校舎割と高いし動揺しちゃって…。」



「やっぱり？
　ごめん！気づかなかった…。」



手を合わせて可愛らしく首を傾げるラウちゃんに
軽く微笑み返すと再び窓に視線を戻した。



いずれは、克服しなきゃいけない。
幸せな人生を求めて、佐倉Aの生涯を犠牲にしたのに
過去にとらわれたままで何一つ進めていない。



「あのさ、ラウちゃん。」



「どうしたの？」



英語の教科書を広げているラウちゃんの方を向けば
優しく聞き返してくれた。



「やっぱり屋上で食べようか。」


「へ！？」



「苦手なこととか克服していきたいと思って！」



あの日以来、一度も足を踏み入れなかった屋上。
足がすくんだけど、ラウちゃんが優しく手を握ってくれて
驚いて顔を見上げると、歯を見せて微笑んだ。



「人いなくてよかったね！
　あそに椅子二つ並んでるから座ろ！」


フェンスに向かって横並びになっている椅子に腰かけると
真っ青で雲一つない空が広がっていて
飛び降りた時の光景がフラッシュバックした。


「やっぱり怖い？」



「ううん、大丈夫。」



あの時は最後まで一人ぼっちだったけど
今はこうして隣に友達がいる。
それだけで心が軽くなって、スッと心が軽くなった。
案外恐怖心は、簡単に消えてくれるものだったみたい。



「Aちゃんのお弁当美味しそう！
　自分で作ってるの？」



「一応、家族の分作ってるよ。」



心配をかけてしまったことや、
故意でなくてもこの子の人生をもらった罪悪感から
家族全員分の弁当を作るようにしている。
みんなすごく喜んでいるし、私も嬉しくて毎日続けている。


「いいなぁ！」


「交換する？」


「いいの！？」


お弁当を交換すると、勢いよく食べ始めて
美味しいと言いながら食べてくれる姿に
心が少しときめいた。

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