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「阿部先生ちょっと、この前の事で。」



「ああ、はい。」



俺が立ち上がると、康二とふっかは固まってるし
他の教員もびっくりしている。
校長と俺は気にすることなく職員室を出て
何も話すことないまま校長室へと向かった。



「お話し中に遮ってしまって申し訳なかったね。」



「いえ、大丈夫です。」





高そうなソファーに腰かけると
校長も向かいの席に座って、俺の顔を見て微笑んだ。
目の前にいい香りの紅茶を出されて
お互い一口飲むとカップを下ろした。






「この前の話なんですけどね。」




「はい。」




「考え直すことは…できませんか?」




まだ宮舘さんの件に関わる前の事。
ある目的で教師になったものの、その目的を達成することなく
この平和な日常に甘える自分が嫌になって
校長に今年度付で退職したいと申し出た。




「理由を聞いてもいいかな?
 特に生徒や教員とトラブルはなさそうだし
 仲のいい人もいるみたいだし
 ご家庭のトラブルとかなら、できる限り配慮はするよ?」



平和で明るい雰囲気が漂う学校に相応しい
なんでも親身になって寄り添ってくれる。
ただいまはその優しさが
痛いほどに刺さって苦しい。



「僕は…思い描く教師像になり切れなくて
 こんなんじゃ、顔向けできない人がいるんです。」




「それは、あの子かな?」



ここの校長は、元々俺が通っていた高校に勤務していた。
2年生の時の学年主任で
いつも相談に乗ってくれていた。



「はい。
 …俺、最低ですよね。」




「はは、うーん。
 あまりいいとは言えないかもしれないね。」




勿論先生はあの子の、Aちゃんの事を知っている。
Aちゃんが飛び降りた後の対応は
先生が主になって行っていた。
俺がいじめられていたことは知っていたけど
代わりにAちゃんが標的になっていたことは知らなくて
俺はその時、初めてあの温厚な先生に殴られた。




「でも嬉しかった、
君がちゃんと反省して、こうやって教員の道に進んでくれたのが。」





先生俺は、貴方が思ってるほどいい子じゃないです。
今また、同じ過ちをしでかしそうになって
ただ逃げようとしてるだけなんです。

・→←第五章 真正



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まいちゅん(プロフ) - ぱぐたろうさんの世界観が好きです。 (2021年1月25日 0時) (レス) id: 3613c412bc (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます!うれしいです、励みになります。今日からまた更新しますので是非見てください(^▽^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - りささん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます!そう言っていただけるとすごくうれしいです!りささんもお体ご自愛下さい、更新頑張ります(^^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - Roseさん» ありがとうございます、励みになります!Roseさんもお体お気をつけてください!(^^)! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!本日更新しますので是非見てください(^^)無事に楽しめました! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月13日 20時

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