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「ほんまや、俺知らんわ。」



康二も全く知らないらしく、唖然としている。
ふっかは左手で顎を触りながら
また唸り声をあげて自分の世界へ入り込んでいる。



「いじめに心当たりが合って言ったのか
 もしくはその噂が流れた方が都合がよかったのか。」




俺がポツリと言うと、二人は同時にこちらを見る。
考えられるのはこの二択しかない
じゃないとこんな噂流しても得にならないし。



「もう俺、いつか病みそう。」


「その前に俺らに吐き出せよ。」



「ふっかさん…。」



康二はもうボケる気力もないみたいだ。
今年度初めてクラスを持って、あんなに喜んでいた康二は
よく見ると少し痩せていて、目にも隈が見えた。




「とりあえず、まだいじめと決まったわけでも
 自分から飛び出したって決まったわけでもないし
 起きちゃった事故は防げないんだから
 教師としてこれから守ってあげればいいよ。」



今俺が言えるのはこれだけだった。




「阿部ちゃんにしてはいいこと言うじゃん。」



「にしては!は余計だし、その呼び方止めて。」



ふっかに褒められたけど、素直に離れなくて
康二はついに泣き出してしまうし
聞き耳を立てていた教員たちも
何処か苦しそうな、悲しい表情をしていた。




「じゃあ、視点を変えて行動してみるか。
 宮館さんは今のところ大丈夫そうだし
 噂を流したのが誰か探すことを第一優先にしよう。」




俺も手伝うからとふっかが康二の頭を撫でると
ふっかに抱き着いて、嗚咽交じりに号泣した。
職員室だけど、そんなこと気にしてられなかった。



「ちょ、お前鼻水つけんなよ!
 このTシャツ高いんだぞ!?」



「金持ちやねんから新しいTシャツ買えばええやん!」



「売店勤務の成人男性が金持ちだと思うか?!」




…、感動のシーンは一気に職員室名物の言い合いに変わり
またもや呆れ返った雰囲気が充満する。
俺も呆れつつ作業に戻ると
自分の両手が震えていることに気が付いた。








もし、この二人が、学校中が
俺の過去を知ったらどういう反応をされるだろうか。
きっと引かれて、離れていくだろう。
それが怖くて、ずっと隠して生きているけど
そのたびにあの子の睨んだ顔が脳裏に浮かぶ。
お前だけ幸せになれると思うなよとでも言うように。

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まいちゅん(プロフ) - ぱぐたろうさんの世界観が好きです。 (2021年1月25日 0時) (レス) id: 3613c412bc (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます!うれしいです、励みになります。今日からまた更新しますので是非見てください(^▽^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - りささん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます!そう言っていただけるとすごくうれしいです!りささんもお体ご自愛下さい、更新頑張ります(^^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - Roseさん» ありがとうございます、励みになります!Roseさんもお体お気をつけてください!(^^)! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!本日更新しますので是非見てください(^^)無事に楽しめました! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月13日 20時

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