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「先生遅―い!!」


先生が教室に入ると、クラスは和気あいあいと騒ぎ出す。
学校にいい思い出なんてないから
自然と足がすくんで、教室までの一歩が踏み出せない。



「Aちゃん、本当に大丈夫…?」



「何やってんの!
 早う入ってきいや!」



私を心配するラウちゃんをよそに、
向井先生は私をドンっと押し込んでよろけながら教卓へ突進した。
脇腹に入ってしまって、抑えながら屈むと
前の席の子数名が駆け寄ってきてくれた。



「宮館さん大丈夫?」


「先生サイテー。」


「ご、ごめんやん!」



助けに来てくれた子たちが優しく立たせてくれると
向井先生に向かってブーイングが飛び交い
涙目になりながら謝ってくる姿に笑みがこぼれた。



「…肋骨折れたかもしれません。」



「嘘やろ!?」



私の冗談を真に受けてパニック状態に陥る先生に
どっと笑いが起きて、先ほどの緩い雰囲気が戻ってきた。
様子を見るにどうやらクラスでも受けがいい子だったみたいで、
亮平の件以外は、私の願い通りに事が進んでいる。



「もういじらんでやー!!
 ホームルーム始められへんやん!」



「先生が遅れてきたからだろ!」



男子の一言で下唇を突き出す向井先生。
クラスがまた笑いに包まれて
今のうちに席に着こうとするけど場所がわからない。



「Aちゃんは僕の隣ね。」



困っていると、ラウちゃんが後ろから声をかけて来て
エスコートするよう、背中に手を添えて連れて行ってくれた。
席は窓際の一番後ろで、隣を見ると二個隣で結ちゃんが手を振っている。



「もう時間ないからホームルームなし!
 次は古典な!!お願いやから寝んといてや?
 後で怒られるん俺やねんから…。」



腕時計を見ながら慌てて教室を出る、
まるで嵐のような先生だ。


「康二君は英語担当ね!
 古典の先生、学年主任だから怖いの!」



両手の人差し指を頭の上で立てて
鬼のポーズをするラウちゃんが可愛くて笑ってしまった。
そう、これぞ私が憧れていた学校生活だ、
たしか亮平は別館で学年も違うと言っていたから避ければ何とかなる。


「…阿部先生、だっけ?
 気にしなくていいよ、フォローなら僕がするし!」


「二人の世界入らないでよー!
 私だってAのお世話するもん!」



結ちゃんも仲間に加わって、賑やかになる。
こんな穏やかな日常を送れるなんて夢みたいで
もし夢なら、永遠に覚めないでほしいと願った。

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まいちゅん(プロフ) - ぱぐたろうさんの世界観が好きです。 (2021年1月25日 0時) (レス) id: 3613c412bc (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます!うれしいです、励みになります。今日からまた更新しますので是非見てください(^▽^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - りささん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます!そう言っていただけるとすごくうれしいです!りささんもお体ご自愛下さい、更新頑張ります(^^) (2021年1月21日 19時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - Roseさん» ありがとうございます、励みになります!Roseさんもお体お気をつけてください!(^^)! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!本日更新しますので是非見てください(^^)無事に楽しめました! (2021年1月21日 18時) (レス) id: 182e74d2ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年1月13日 20時

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