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「なんで遺書持ってんの。」



「僕が死んだらお葬式来てね〜って
 それで時期を見てこれ渡してって。」



「なんで元カノにそんなこと頼んでんだよ…。」



「頼める人いないってさ、
 照くんは大事な孫だけど
 お母さんに何かされたら危ないからって、
 そんなに仲悪いの?」



その言葉に動きが止まる。


母と祖父は折り合いが悪かった、
その理由は祖父の子供にあたる父親が原因なのだけれど
とても他人に話せるような内容ではなかった。


そんなことまで話していたなんて
祖父は本気で彼女と付き合っていたのだろうか。




「照くん大丈夫?」



「え、なにが?」



「顔色悪いよ?
 やっぱ今日は帰るね!
 心配だしこれ置いて帰るから好きに使って、
 本当に危なくないから!」



よほど顔色が悪かったのか
Aはさっき取り出したポーチを机の上に置き
俺の頭を撫でると家を出て行った。



痛む頭を押さえて立ち上がるとふらついて
念のため体温計を持って来て脇に挟むと
雨が上がった曇り空をぼんやり眺めた。



「38度…。」



明らかに昨日雨に打たれたせいだ。
こういう時に限って冷蔵庫には何もないし
常備している薬もタイミング悪く切らしていて
最後の頼みの綱でAが置いていったポーチに手を伸ばした。



「何でも揃ってんじゃん。」



中には風邪薬やトローチも入っていて
ありがたく使わせてもらうとベッドに入った。
一応ラインを入れておこうとスマホを取り出し
薬を貰った事とお礼のメッセージを送ると
すぐに既読がつき返事が返ってきた。




“用法は裏に書いてあったよね?
 ちゃんと守ってね〜”



「真面目かよ。」




あの見た目に反してかなり几帳面なのか
そこもまた違和感を覚えて眉間に皺を寄せる。
でも今はそんなことを考えられるほどの元気はなく
大人しく目を閉じて意識を飛ばした。









《お前大丈夫〜?
 もう三日も大学来てねえじゃん。》



「熱下がんないんだよ、
 病院行ったら季節の変わり目で
 自律神経が乱れてて熱が治りにくいんだとよ。」






何回か咳き込み痛む頭を押さえると、
電話越しからふっかの心配する声が聞こえる。
梅雨入りしてから降り続きだった雨は
俺が風邪を引いた次の日から快晴が広がっていて
よくわからないモヤっとした気持ちになった。

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ぴくみん(プロフ) - ぱぐたろさんの作品の一つ一つ伏線を回収していくお話が本当に好きで、今回もワクワクしながら読んでいたらあっという間にエンディングでした!今回の作品もとても面白かったです…いわふかの関係性が最高でした。 (2021年6月28日 3時) (レス) id: 3b567ca5ed (このIDを非表示/違反報告)
みー - 他にはないジャンル?のお話で、一気読みしました!すごくおもしろかったです! (2021年6月27日 23時) (レス) id: 978894b8a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年6月27日 20時

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