君にしか見えない。

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「事故の時も、俺だけ置いてかれて
　苦しくて…寂しくて…」



「康ちゃん…」



「俺のお遊戯会は、Aが生まれたばっかりで
　二人とも来てくれへんかったのにって
　主役で頑張ったのに…帰っても
　頑張ったねすら言ってもらえんかったのにって…
　Aが憎くて仕方なかった…っ、」



大人になった今は、誰も悪くないって
生まれたての乳児を優先するのは当たり前やって
親はともかくAは何も悪いことしてないって
自分の中で時間をかけて消化していくことができた



でもAは
俺の最低な発言のせいで
ずっと苦しんでいた。




「でも今は…、ホンマにAの事
　大切な妹やと思ってるし
　Aが幸せになれるんやったら何でもする
　だから一人暮らしなんて無茶なことも許した。」



「…それは罪悪感からでしょ？
　康ちゃんは優しいから…」



「それもある…でも…っ、
　ごめん、俺Aに言わなあかん事がある。」



泣きそうな顔で俯くAの姿を見て
今すぐにでも逃げ出したくなった。
でもここで向き合わなかったら、
一生すれ違ってしまう。



「お前が幽霊やって言うてるの…俺やねん。」



「へ…？」




「目が見えへんくなってから、避けてた時期あったやろ？
　ホンマはすぐそばにおってん
　ずっと…お前に嫌がらせしてた…っ、」




甘やかしてくれる親がいなくなって
今更俺に甘えてくるAが許せなかった。
今思えば、突然親が亡くなって目も見えなくなって
怖くて兄を頼るのは当たり前なことなのに。




「服引っ張ったり、クレヨン隠したり
　でもAは幽霊さん遊ぼうって…
　そばにいてくれてありがとうって…笑顔で…っ、」




「それは…心細くて
　そばにいてくれるのが嬉しくて…本心で…」




「わかってる…だから苦しかった。
　それでもうこんなことやめようって
　久々にAって呼んだら
　康ちゃんだって泣いて喜ぶから…っ、」




今まで自分がどれだけ酷いことをしてきたのか
Aの涙を見て初めて気づいた。




「Aの子とあれだけ追い詰めて
　それでようやく気付くなんて…ごめんっ、
　自分勝手なのはわかってるけど
　酷いことした分…Aの事幸せにしたいって…っ！」



今度はちゃんとお兄ちゃんとして守るから
もう寂しい思いさせへんから
だから、もし許してくれるなら




「兄妹仲良く一緒に暮らしたい…
　遅いかもしれんけどもう一回
　俺にチャンス…くれへんかな…？」

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