神に誓わなくったって 後編

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「朝から暑苦しい。」



「見てたん？！
　羨ましいからって僻みはよくないで！」



「あんなとこでやってたら見えるし
　あと羨んでない、呆れてる。」



更衣室でナースウェアに着替えていると
準備が終わって出て行こうとしているめめに冷やかされた。
でもいつもみたいに眉間に皺は酔っていなくて
心なしか口角が上がっているように見える。



「めめありがとう。」



「…ん。」



冷たいところもあるけど
悩んでるときに寄り添ってくれるのはめめが一番多い。
今もこうして俺が着替えるのを待っててくれたり
なんだかんだで惚気話に付き合ってくれたり
同期がめめで良かったと心の底から思う。



「さて！今日はAさんが迎えに来てくれるから
　残業なしで頑張るで！」



「はいはい頑張って。」



「なんやその棒読みは！」



そんなやり取りをしながら病棟に着いて
いつも通り惚気全開で一方的に話すことを
めめが右から左に流していると申し送りが始まった。



「康ちゃんは今日も可愛いね〜。」



「ありがとう！
　トメさんも俺に負けへんぐらいかわええで！」



「やだ〜。」



夜勤の人からの引き継ぎを終えて
検温をするために担当の各病室を回る。
受け持ちのトメさんと談笑しながら血圧を測っていると
俺の左手を優しく掴んで顔の前に持っていき
じっと見た後目を輝かせて俺に視線を向けてきた。



「あんた独身か！」



「へ！？」



「うちの孫娘！
　可愛いんよ、どう？」



どうやら俺の左手薬指指を見て独身と判断したらしい。
慌てて血圧計を取り外し記録して
トメさんの手を優しく両手で包み込むと
目線が合うようにしゃがんで微笑んだ。



「ごめんなトメさん、
　俺には世界で一番愛してる
　めっちゃくちゃ可愛い奥さんがおるねん！」



「あら…残念…。」



「そんな落ち込まんでー！」



本当に残念そうに気を落とすトメさんに
俺まで申し訳なくなって眉を下げる。
何とかなだめて後片付けを始めると
諦めがついたようで窓の外に広がる海を眺めていた。



「ほんならまた来るな！
　何かあったら我慢せんとボタン押してや！」




そう言い残して病室を出ようとすると
トメさんに呼び止められて
振り返ると俺を見つめて手招きをしていた。

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