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「お姉さん、歩き煙草は駄目だよ。」
後ろから声をかけられて、
夜道に一人で来てしまったことを後悔した。
でもその声は聞きなじみのあるもので
振り返ると息が止まりそうになった。
「なんでいつも来てくれるの…っ。」
「泣くなって言ったのに
どこかの誰かさんがまた一人で抱え込んでるから。」
そこにいたのはシンプルな服装のざわくんで、
肩で息をしながら私に近づきデコピンをしてきた。
額を擦りながら顔を見上げると
困ったような顔で私の頭を撫でた。
「こんな時間に…お前ほっぺどうした？」
「ああ…色々、そのっ。」
「誰に叩かれた！？」
焦った様子で私に肩を掴み揺らしてくる。
こればっかりは言い訳のしようがなくて
正直に話しながら家までの道のりを歩いていると
ざわくんの表情はだんだん暗くなっていった。
「康二は今どこに居んの。」
「…怒ってる。」
「そりゃ怒るだろ、
話も聞かないで…自分にだって原因はあるのに
一方的に叩くとかありえない。」
まるで自分の事の様に怒ってくれるざわくんは
やっぱり頼りたくなる優しさで溢れていて
憂鬱だった気分が少しだけ軽くなった。
「…クサいこと言っていい？」
「え？」
「…俺ならそんなことしないのにって。」
俯いて、私の歩幅に合わせながら歩くざわくんは
車の音にかき消されそうなほど小さな声で呟いて
私は歩くのを止めてその場で立ち止まった。
「翔太や涼太くん、照君にも言われた。
康二くんとのことで、そのたびに決意が揺らいで
私はいつの間にか最低な大人になってた。」
「そんなこと…」
「いや、大人にすらなれてなかった。
それが許されるのも今日まで、
明日は広斗さんに会いに行く日だから。」
「そっか、明日で八年か…。」
右手にはめた広斗さんとの結婚指輪を見つめると
隣でざわくんも視線を向けてくる。
「本当は指輪を返すつもりだったんだけど
一生返せなくなりそう。」
「…そっか。」
「もう誰とも愛なんて誓わない、
神様があの誓いはどうしたんだって怒ってるんだよ。
…だからざわくんっ、」
「もう泣くなってば！
泣きたいのはこっちなんだからな？」
少しでもこの場を明るくしようとしてくれるざわくんに
涙を堪えて微笑みかけると
また二人並んで家までの夜道を歩いた。
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ピカンチ★(プロフ) - はじめまして、素敵なお話に涙がとまりませんでした。ふっかさんの手を取らないところがまた切なくて、めめのぶっきらぼうだけど温かさのあるところとか、リンクするところもたくさんありました。康二ええわぁ。康二熱あがりそうです！他のお話も読んでみます (2022年4月8日 8時) (
レス) @page30 id: 9026a4e0b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - coccoさん» 読んでいただいてありがとうございました！本人達の意思が尊重されるようになればいいですね！次回も頑張ります！ (2021年6月15日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - しずかさん» こちらこそありがとうございます！恋愛と結婚は違うって言われてたりしますしね。楽しんでいただけて良かったです！ (2021年6月15日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 廉桜さん» 読んでいただいてありがとうございました！本人達の強い意志ももちろんですが、やっぱり周りの環境は大事ですよね。ありがとうございます！ (2021年6月15日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
cocco(プロフ) - いつものシリアス系とは違ってすごく感動しました…！私は旦那が4歳上、兄は5歳上の姉さん女房。兄の結婚にはなんとなく親戚の反応が難色だったのを思い出しつつ、色々な結婚の形が受け入れられる時代になればいいなと改めて感じました。次回も楽しみにしています！ (2021年5月30日 4時) (レス) id: 4774ec4c1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年5月12日 19時
