ハローエフェクト前編 (ページ8)

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「あ、そっか！」

俺はスマホを取り出してメモのアプリをタップし
急いで文字を打ち込み彼女に差し出した。

「怖い？大丈夫？」

声に出して読みながらメモを見せる俺を
目を真ん丸にして見つめてくる岩本さん。
言い合っていた二人もこちらを見ている中
彼女は慌ただしく首を縦に振った。

「可愛い…っ！
　近くで見ると本当にハムスターみたい！」

「佐久間のバカ、あと近い…。」

阿部ちゃんが顔を手で覆いか細い声で言うと
俺は慌てて近づけていた顔を離した。
岩本さんは顔を真っ赤にしてパソコンと向き合うと
そのままデスクに突っ伏してしまった。

「本当にすいません！」

「私に謝っても意味ないでしょ…。」

早見さんは呆れて自分のデスクに肘をつき頭を抱える。
隣に立っている阿部ちゃんは
無言で俺の頭を叩いて深々と頭を下げた。

「まあ私もAちゃんの前であんな姿見せちゃったし
　怒る資格ないんだけどね。」

「いや、あの言い方は誰でも怒りますよ。」

阿部ちゃんはすっかり渡辺さんが嫌いになったみたいで
もはや早見さんよりも怒っている。
優しいからこそ許せないんだろうななんて考えていると
前からデコピンが飛んできた。

「いたっ！！」

「とにかく、Aちゃんはシャイなの！
　初対面の男にあんなに顔近づけられたら
　そりゃ顔赤くして隠れたくもなるわ。」

早見さんは本日何度目かの大きな溜息をつくと
俺ら二人に資料を渡し仕事の説明の続きを始めた。

「二人とも覚え早いし明日からは任せられそうだね。
　でもまあしばらくはどの仕事も最終チェックだけはするから
　終わったら私の所に持って来てね。」

話が終わって社内の時計に目を向けると定時が迫っていた。
時間が経つのは早いななんて思いながら帰る準備をして
阿部ちゃんとオフィスを出ようとした。

「あ、ごめん忘れ物した。」

「阿部ちゃんが珍しい…！」

取ってくると走り出した背中を見届けて
出口横の壁にもたれかかって待っていたら
ゆっくりと扉が開いて人影が見えた。

「あっ！」

「…！」

人影の正体は岩本さんだった。
俺を見て深々と頭を下げるとメモ帳を取り出し
何やら文章を書き始めた。